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VOL.01料亭コンシェルジュ~若女将に聞く賢い料亭の使い方~2018.11.20

料亭で実らせる、プロポーズ大作戦

By佐竹恭子

料亭コンシェルジュ~若女将に聞く賢い料亭の使い方~

人生の大きな節目を料亭ですごす。それはほかにはない格別な時間です――と言われても、いったいなぜなのか? 何ができるのか? 料亭とはなかなかわかりにくいもの。そんな料亭ビギナーを「美濃吉本店 竹茂楼」の若女将・佐竹恭子さんがエスコート、大切な日を彩ってくれる料亭の使い方を教えてくれます。
第1回目は、恋をして、お付き合いをしていくうちに「ああ、この人と一生を添い遂げたい」、そんな気持ちが高まったらいよいよ……の【料亭でプロポーズ編】です。

プロポーズのお手伝い、させていただきます。

みなさま、ようこそお越しくださいました。「美濃吉本店 竹茂楼」若女将の佐竹恭子と申します。竹茂楼は享保元年(1716年)に初代が美濃国から京都へ移り、腰掛茶屋を開いたのを始まりとする老舗料亭です。若主人の佐竹洋治に嫁ぎ、さまざまなお客様にお目にかかってまいりました。
実はプロポーズの場合は、ご予約の時にもその内容はご相談されず、お部屋だけを取られる方が多いのです。その日になって、ご様子から「どうやら……?」と気づくのですが。もちろん、密やかにプロポーズをされるのもとても素敵なことです。でも私どもにお伝えいただけましたら、こっそりとお手伝いさせていただけることが、いろいろございますよ。

入店早々、玄関でまごついてしまいそうです

美濃吉本店 竹茂楼

料亭の大きな門構えに腰が引ける?いえいえ、そこでグッと胸を張ってどうぞお入りください。正式なマナーとしては、前向きのまま靴を脱ぎ、脱いだ靴を手に持ち向きを変えるものですが、少々それが違ってもかまいません。玄関番がお靴をお預かりいたしますので、「まかせたよ」という気持ちで靴をお脱ぎください。そんな姿を女性は頼もしいと思うでしょう。

広い?小さい?お部屋はどのサイズがよいのでしょう

美濃吉本店 竹茂楼

4畳半から6畳までのものがよいでしょう。お二人の距離を程よく近づけてくれるサイズです。お二人でも広いお部屋はご用意できますが、テーブルも広くなりますので、お相手が遠くになってしまいます。
小ぶりといっても竹茂楼の場合は床の間もあり、掛け軸か絵、季節のお花も生けておりますし、お庭もきれいに見えます。こうした装飾がお部屋にほどこされているほうが、会話の糸口にもなりますのでよりよいかと思います。料亭によってしつらえは違いますので、予約の時にご確認されることをおすすめします。

掛け軸や絵について、彼女に説明できたほうがいいのかな?

知らないものを無理に語る必要はございません。お部屋係りの者に素直に「この絵は誰の作品ですか?」とひと言おたずねくだされば、作者やいわれなど丁寧にご説明差し上げます。

美濃吉本店 竹茂楼

掛け軸や絵は、ご要望のものを飾ることができます。私としましては、プロポーズだからとはりきって、「寿」など直接的なものを飾るのはおすすめいたしかねます(もちろん、ご希望であればご用意いたしますよ)。それより、つがいの鳥の絵など、ささやかにお二人の未来を示唆するようなものが好ましいかと思います。花言葉を秘めた、ご要望のお花を生けることもできます。最初は少しだけお気持ちを見せる、それもクライマックスへ向けてのよい演出になるのではないでしょうか。

プロポーズに効果的なお料理ってありますか?

お二人の目の前でのパフォーマンスのあるお料理はいかがでしょう? 日本料理ですとコースに沿ってお料理が順番に運ばれてくるだけで、動きのあるお料理はあまりないかと思われるかもしれませんが、実はいろいろとご用意できるのですよ。

美濃吉本店 竹茂楼

たとえばご婚礼でもご好評いただいている、しゃぶしゃぶです。お部屋にお鍋と最上級の和牛をおもちして、お二人の目の前でお出汁にくぐらせてお出しします。初夏のお鍋ですと、鮎の稚魚をいただく氷見鍋もおすすめです。秋なら松茸を、小さな炉を用いて炭火でお焼きすることもできます。最後にはお抹茶をおたてしますので、ほっと一服、緊張感から解放されて喜びにひたれることかと思います。いずれも香りが部屋中を包み込み、まさに五感を使って楽しめるお料理です。
こうしたパフォーマンスをお料理の流れに取り入れると、召し上がったお料理も印象深くなり、プロポーズの日の思い出に刻まれることでしょう。

彼をドキッとさせたいのですが

美濃吉本店 竹茂楼

女性ですと、やはり美しく男性の目に映りたいものですよね。カウンターとは違い、お座敷では目の前に男性が座られるのですから、箸使いが美しいことは何より好印象を与えるひとつです。茶道でいわれることですが、「三手(みて)」で扱うと、とても上品です。
たとえばお箸を取り上げるときは(1)二本の箸の少し右を上からそっと取る(2)左手を箸の下に軽く添える(3)右手を箸に沿って下へ滑らせ持ち直す、という3つの流れになります。お箸を下ろす時も同じです。
これは、お椀の蓋を開けるときにも応用できます。「三手」で扱うと、ひとつひとつの動作がゆったりとしているので、優雅なふるまいに見えるのです。慣れていないと最初はなかなかとまどうでしょう。ですのでせめてお箸を置かれるときだけでも、意識してみてください。慣れてくると指先が揃い、奥ゆかしさが出てまいります。
もし指輪や時計をされていらっしゃる場合は、白磁や永楽などのよい器を使用したお料理や、メイン料理の時には、そっと外してテーブルの上に置かれてから器をお手に取ってみてください。アクセサリーで器を傷つけないという配慮のできる女性は、男性にも配慮する女性である……そんな印象を持っていただけるかもしれません。

お造りの醤油が垂れてしまいます。彼に幻滅されないかしら

美濃吉本店 竹茂楼

お造りをいただくときも女性の見せ場です。ぜひ懐紙をお持ちください。お醤油をつけたお造りを、手皿で口に運ぶのは美しくはありません。いただく前に懐紙をバッグから取り出し、机の上かお膝にご用意いただき、召し上がられるときにはそれを手に取り受け皿の代わりにお使いになられると素敵です。
わさびは醤油に直接溶くのではなく、お造りの上にのせるのがよいとされています。これはマナーというだけではなく、実は理にかなった方法なのです。わさびは殺菌効果がありますから、生魚の毒消しや臭み消しの役目があると、古来より重宝されてきました。ですから直接お造りにのせたほうが、その効果が発揮できるというわけなのです。こうしていただくと、所作も美しいですし、美味しいですしと、いいこと尽くしですね。

若女将が見た、思い出に残るプロポーズ

インドネシアのお客様から竹茂楼でプロポーズをしたいと、メールでご連絡をいただきました。「日本らしい風情のなかで、愛する女性に想いを伝えたい」と。
その方のご希望は「フルーツをとにかく豪華にしてほしい」、ということでした。南国の方らしい発想ですよね。そこで私どもは大きな台を用意し、そこに季節のフルーツをふんだんに盛り付け、アイスを添え、ハート形の水引を飾りました。
そして通常、お部屋には音楽はないのですが、お客様ご自身でご用意されたものをお流しいたしました。ムードは盛り上がり、運ばれてきたフルーツを見た女性は輝くばかりの笑顔に……もちろん、プロポーズは大成功です。

美濃吉本店 竹茂楼

特別なことを頼むと料金が心配……など杞憂です。あまりにもイレギュラーなことですとご相談になりますが、たとえばインドネシアの方のフルーツのように、お料理のなかでできることでしたら、ご料金のなかで精一杯以上のことをさせていただきます。花束やケーキをお持ち込みいただけば、最良のタイミングでお出しすることをお約束いたします。

撮影 津久井珠美、美濃吉本店 竹茂楼文 竹中式子

美濃吉本店 竹茂楼

■ 美濃吉本店 竹茂楼

京都市左京区粟田口鳥居町65
昼11:30~14:00(最終入店) 夜17:00~22:00(19:30最終入店)
土日祝11:30~22:00(19:30最終入店)
定休日 不定休
075-771-4185

佐竹恭子さたけ たかこ

「美濃吉本店 竹茂楼」若主人の佐竹洋治氏の夫人。数寄屋造の本館と合掌造の別館からなる店舗は、各座敷から小川が流れる竹林の庭が望め、四季折々の京料理とともにくつろいだ時間を過ごせる。300年続く歴史ある料亭を若女将として支えるべく、日々奮闘している。

京都知新編集部推薦

Editors' Choice

「料亭」では、座敷で、床の間のしつらえ、庭の景色、女将さんや仲居さんの所作、季節の空気の色をふくめて、空間ごと「静」の美意識を五感で感じることができます。 「割烹」では、カウンターの目の前で、調理、盛りつけといった料理工程や、大将や、二番手、三番手の料理人の所作を見ながら、「動」の美意識を体感することができます。このコーナーでは、京都知新編集部のスタッフが実際に行ったことがある店の中から、【この店に行けば、そんな静と動の美意識を味わえる】「料亭」と「割烹」をご紹介いたします。

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