BLOG外国人料理人奮闘記2020.03.20

インド人料理人シェイク・ヌルールさんの「とてもおいしかった」

今回ご紹介する外国人料理人は、京都市内で3軒のインド料理店を営むシェイク・ヌルールさん。北野白梅町に1号店「ヌーラーニ」をオープンして早12年、インド料理一筋のコック人生を振り返ってもらいました。

インドからドバイ、そして東京へ

出身はインド北東部のコルカタです。実家は農家ですが、僕は子どもの頃から料理が好きで、ずっと料理人になりたいと思っていました。レストランで料理長をしていた兄から手ほどきを受け、料理の世界に入ったのが17歳のとき。ホテルなどで経験を積み、20歳の頃にドバイで働かないかと誘いを受けて、当時の勤務先の店長と一緒にドバイに行くことになりました。それが1999年の12月だったかな。それから5年くらいドバイでコックとして働きました。

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転機が訪れたのは2005年、親戚が東京で働いていて「東京に来ない?」と誘われたんです。まだ若くていろいろ経験してみたかったし、ドバイの上司も「何か問題があったら、すぐに帰ってきたらいいから」と言ってくれたので、思い切って東京へ行くことに。日本のことは何ひとつ知らなかったけれど、2005年の3月に来日し、東京のインド料理店で働き始めました。

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店長は「いつでも帰ってきたらいい」と言ってくれましたが、特に問題もなく(笑)、日本で順調にキャリアを積むうちに、とあるパーティーで今の奥さんと出会いました。その頃、彼女は京都でシェフをしていて「いつか自分の店を持ちたい」という夢を持っていたんですね。僕も将来は日本で独立したいと思っていたので、同じ夢を共有しながら、京都と東京でしばらく遠距離恋愛を続けました。

京都・北野白梅町に念願のお店をオープン

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その後、結婚をし、開業に向けて物件探しを始めました。舞鶴、滋賀......いろんな土地を見てまわりましたが、最終的に北野白梅町で「ヌーラーニ」をオープンしました。最初はとても不安でしたね。あの頃はインド料理店も少なくて、インド料理自体の知名度が低かったこともあり、具体的なビジョンが持てませんでした。でも口コミでどんどんお客さんが増えていって......学生時代から社会人になってもずっと通い続けてくれる常連さんや、今ではすっかり友だちみたいになったお客さんもいて、お店も3軒まで増やすことができました。

旬の味覚が楽しめる黒板メニュー

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僕は今、烏丸北大路の姉妹店にいることが多いです。どの店もメニューはとても多いのですが、グランドメニューに載ってない「黒板メニュー」が食べられるのは、僕のいるお店だけ。「黒板メニュー」には、その時々の季節の野菜や魚を使ったアラカルトを載せています。特に京都に来てからは、日本の旬の食材をたくさん扱うようになって、その時季のスペシャリテを味わってもらっています。仕入れの日は朝4時に起きて、奥さんと一緒に中央市場まで出かけます。日本の食材をどんな風にインドのスパイスやソースと合わせるか、今も日々勉強ですね。

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お客さんの中には昼、夜と続けて来てくれる常連さんや、週に何度も足を運んでくれる人がいます。そういうお客さんに毎回同じものは出せません。顔を見ながら少しずつ味付けを変えたり、食材に変化を持たせたりして、その時に一番おいしいと思ってもらえるものを出すようにしています。キッチンをオープンスタイルにしているのも、そのためです。

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これは黒板メニューから、菜の花を使った肉料理。煮込んだ牛肉をトマトベースのソースといろんなスパイスで調理しています。辛さはもちろん、お客さんと話をしながら、スパイスの使い方を変えることも。そういうアレンジは僕以外のコックさんには(言葉の問題もあって)難しいので、季節のアラカルトが食べたい方は、ぜひ僕の入っているお店(※)にいらしてください。
※確認はお電話で

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これも黒板メニューから、「寒ぶりサーグ」です。サーグというのは緑色の葉野菜のこと。今日はほうれん草のペーストで脂の乗った寒ぶりを煮込みました。お客さんが口に運ぶタイミングで一番おいしくなるように、ぶりは半生ぐらいに仕上げています。

インド料理は何種類ものソースの組み合わせによって、いろんなバリエーションが出せるんです。僕の料理は基本的に日本向けのアレンジはしていません。辛さは調節しますが、それ以外の味付けや使っているスパイスは基本的に現地仕様。出身の北インドだけでなく、インド全土のお料理をまんべんなくお出ししています。

お客さんの言葉を励みに

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好きな言葉? お客さんの「とてもおいしかった」かな。その言葉を聞くのが何より幸せ。揉めごとやケンカもなくて、日本は本当に暮らしやすい国だと思います。北野白梅町のこのあたりもとても住みやすくて、近くに家を建てました。店から歩いて10分くらいかな? 年を取っても近くなら通いやすいでしょう? オープン以来の常連さんもたくさんいるし、健康でなるべく長く、「とてもおいしかった」と言われる料理を作り続けたいですね。

写真 鈴木誠一 取材・文 鈴木敦子

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■ヌーラーニ本店

京都市北区大将軍川端町21 ルミエール白梅1F
075-464-0586
11:00~15:00 17:00~23:00
不定休

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