BLOG京の会長&社長めし2020.01.22

山田繊維株式会社の社長が通う店「半兵衛麩」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は山田繊維株式会社社長の山田芳生さんが通う「半兵衛麩」です。

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■山田芳生(やまだ よしお)さん 

山田繊維株式会社代表取締役(3代目)。1965年生まれ、京都生まれ京都育ち。大学卒業後、神戸で5年間アパレルの会社に勤務した後、山田繊維の東京事務所開設を機に家業に就く。東京で8年間営業を経験した後、2001年に京都に戻り、2003年社長に就任。
現代のライフスタイルに適したふろしきの開発に力を入れる他、東京(神宮前)と京都(三条)に直営店「むす美」を開設、またセミナーや書籍の発刊など、ふろしきの普及活動も行う。新しいことも、伝統的なことも、その両面が体験できる仕事と、京都という地の利に感謝している。
伝統と革新が入り混じる京都の食文化も大好きで、和食も中華もイタリアンも大好きだが、やっぱり魚料理が一番好き。最後の晩餐には、グジの焼き物。

高たんぱくでヘルシー。伝統の職人技で作る京麩や京湯葉の魅力を「むし養い」で

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京料理に欠かせない麩は、かつては修行僧たちの貴重なタンパク源であり、現代では高たんぱく、低脂質のヘルシーな食材として注目されている。五条大橋の東南に佇む「半兵衛麩」は、宮中・大膳亮で麩作りを学んだ初代玉置半兵衛が、元禄21682)年に創業。熟練の職人技で作られる伝統の京麩や京湯葉は、名だたる本山寺院や料亭などに用いられている。

ここでは、麩や湯葉を販売しているほか、それらを使った「むし養い料理」が楽しめ、主婦など女性を中心に人気を集めている。

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「今年の9月頃、僕が経営の勉強をさせてもらっている先生が連れてくださったお店で、麩の食べ方を皆に知ってもらうために料理を始められたそうです。味はもちろん、会社の経営理念のようなものが伝わってきて、とても素敵なお店だなと思いました。実はまだ1回しか行けていませんが、家内は何度か行っているようです」と、山田さん。

11代目当主の三女で広報担当の玉置淳さんは、「実は前に山田繊維さんの物流システムを社員で見学に行かせていただいたことがあり、それが山田様との最初のご縁だと思います。その後、お食事に来てくださったと聞いています」と、振り返る。

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店舗は築約120年の町家を生かしたもので、横の洋館が販売店舗となっている。建物奥の茶房へ繋がる通路には、昔ながらのおくどさんや調度品などが見られる。

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中庭に面した茶房で楽しめるのが、「むし養い料理」。これを出すようになったのは、約30年以上前のことだという。

「当時、麩に馴染みのない方が多く、どんなふうに食べればいいのかというお問い合わせもたくさんありました。それで一度食べていただくのがわかりやすいだろうということで始めたのがきっかけです。うちは麩の販売が本業ですので、お召し上がりいただき『これだったら家で作れる』と思って買っていただくことが理想。いかに簡単でおいしく召し上がっていただけるかを考えて作っています」と、淳さん。

「自社商品である麩を大事に扱っておられ、皆に使ってもらいたいという思いがとても感じられます」と、山田さん。この店の取り組みに、共感を覚えるという。

「うちの場合は風呂敷ですが、皆が使い方をよく知らないというものを扱っている点で似ているかもしれません。うちも直営店でいろいろな風呂敷の使い方やデザインを見て、風呂敷の概念が変わった、ということを言ってくださるお客さんが多いのですが、半兵衛麩さんもそのようなことに早くから取り組まれていて、すごいなと思いました」(山田さん)

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麩と湯葉の料理「むし養い」3500円。生麩田楽、利休坊、季節の細工麩、竹麩の山椒風味、丁子麩ときゅうりの酢の物、生麩のしぐれ煮、くみ上げゆば、よもぎ麩白みそ仕立てなど、多彩な麩と湯葉の料理が盛り込まれている。素材の特徴を生かした料理はどれもおいしく、なかなかの食べごたえ。ヘルシーで胃にもたれしないのも魅力だ。

「献立は両親が料理の先生に協力していただいて考えたもので、しぐれ煮以外はお家で作っていただけます」と、淳さん。

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かつおと昆布のだしによもぎ麩を入れて温め、白みそをといた「よもぎ麩の白みそ仕立て」。甘くまろやかな白みそとやわらかいよもぎ麩が相性よく、ぴりっとした辛子がアクセントに。

「白みそのお椀は家ではなかなか食べないので、すごく懐かしい感じがします」(山田さん)

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佃煮好きだという山田さんおすすめの生麩のしぐれ煮「禅」。「昔のお坊さんが肉や魚の代わりに食べていたであろう生麩を再現しています」と、淳さん。肉や魚に似た食感に作った生麩を甘辛く炊いたもので、ご飯にもよく合う。生姜、ごま、山椒の3種あり、販売している。

「家ではわりと精進料理を作ることがあり、湯葉の佃煮も食べたりするんですが、おいしかったですね。こんな佃煮もあるんだ、と」(山田さん)

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熟練の職人が良質の地下水を用いて作る京麩。湿度温度の変化に合わせ、生地を練る時間や寝かせる時間を微妙に調節していく。料理に使われている麩や湯葉は、すべて店舗で販売している。

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店内には食文化の大切さを伝えるために10年前にオープンした「お弁当箱博物館」があり、誰でも自由に見ることができる。

「お店の2階が博物館になっていて、昔からのお弁当箱やお重などのコレクションが展示されているのですが、大事にその仕事をされてきている証のようなものが感じられて、よかったです」(山田さん)

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「うちは3代目が石田梅岩の石門心学をやっていましたので、どちらかと言えば人を育てる、人に尽くすという道徳的なものの考え方を大事にしてきました」と、当主の玉置半兵衛氏。「先義後利」と「不易流行」の2つの家訓を代々守り続けてきたという。

「先義後利は、利益を求めるよりまずお客さんに喜ばれること、おいしい麩を作ることをしなさいということ。不易流行は、おいしい麩作りという本質は変えずに、作り方や大きさなど時代に合わせて変えなさいということです」と、淳さんは説明する。時代に先駆けて麩や湯葉尽くしの料理を提供したり、町家を人に見せたりすることや新しい麩のブランドの立ち上げも、そうした精神から生まれているのだ。

「ただ京都らしいだけじゃない、すごいと思うことをされているお店でゆっくりお昼がいただけることって、なかなかない。特別なお客さんとお昼に行くならここに行きたいと思います」(山田さん)

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■半兵衛麩

京都市東山区問屋町五条下ル上人町433
075-525-0008
営業時間 9時~17時 ※茶房11時~16時(LO14時30分) むし養い料理は要予約
定休日 年末年始
https://www.hanbey.co.jp/