BLOG京の会長&社長めし2020.02.10

株式会社鼓月の社長が通う店「十二段家 本店」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は㈱鼓月社長の中西英貴さんが通う「十二段家 本店」です。

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■中西英貴(なかにし ひでたか)さん

京菓子處鼓月 代表取締役社長
1971年京都生まれ。94年に明治大学商学部卒業。
97年京菓子處鼓月に入社。2005年4代目社長就任。
「どのようなお菓子がお客様に共感され喜んでいただけるのか」を常に心掛け、代表銘菓「華」や「千寿せんべい」の伝統を守りつつも、洋菓子工房「KINEEL」、スポーツ羊羹「anpower」などを発案し、多角展開している。
趣味はトライアスロンとスキー。
食事のお店選びは、京都でご縁をいただいた方やご紹介など、繋がりを大切に、がモットー。
最後の晩餐は、ワインと焼き鳥、デザートにホールケーキ丸ごと。

民藝作品に囲まれた空間で、選り抜きの京都牛を使った初代考案のしゃぶしゃぶを

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寒さ厳しい京都の冬は、やはり温かい鍋料理が食べたくなるもの。しゃぶしゃぶは外国人にも人気の鍋料理だが、その発祥の店は京都にある。祇園で長く愛されている中西さんお勧めの一軒、「十二段家」だ。

「場所もお店の構えもいいし、祇園の料理屋さんの中ではリーズナブルでおいしいお肉が食べられます。よく家族や、仲の良い家族同士で行ったりします。東京のお客さんを連れていくこともありますね」(中西さん)

祇園甲部の花見小路通から少し東へ入った場所に佇む風格ある建物。ここがしゃぶしゃぶの店として始まったのは、戦後間もない昭和22年。今の店主の祖父が、軍医で民藝運動家の吉田璋也氏の助言により、羊肉を使った中国の鍋料理、刷羊肉(シュワヤンロウ)の味を再現し、日本人向けにアレンジした「牛肉の水炊き」を考案。そのレシピをいろいろな料理人に教えたことで全国に広まり、その後「しゃぶしゃぶ」の名称で親しまれるようになったという。店では当時と変わらない味をコースで提供。これまで日本の皇族方をはじめ数多くの賓客が訪れている。

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中西さんと3代目店主の西垣大さんは、共に祇園祭の"お稚児さん"の経験者で、小学5年生の時からの仲だという。

「僕は昭和56年、彼は翌年に稚児をやりまして。稚児をやると翌年から長刀鉾の囃子方になるんですが、それ以来のつきあいです。同い年で、偶然にも高校も一緒(笑)。そんな縁もあってよく行きます。しゃぶしゃぶ発祥のお店と言われていますし、いろいろな方を連れて行っても喜ばれますね」と、中西さん。もともと互いの父親同士が知り合いで、幼少期から何度か連れられて行ったこともあったそうだ。

対する西垣さんも、 「中西くんは、毎年夏になると1カ月間、囃子方で一緒になる昔からの仲間で、年に2、3回は来てくれます。ご家族で来られることが多いですね」と話す。食べに行った飲食店の情報など、互いにアドバイスをし合ったりすることもあるという。

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本店ではしゃぶしゃぶとすき焼きが楽しめ、中西さんはしゃぶしゃぶをオーダーするという。 「彼が肉を選んで仕入れていて、とにかく自分とこの肉は一番やと言っています(笑)。ここのしゃぶしゃぶをつけるたれがおいしいんですよね。あと前菜も結構出てきて楽しめます。今、濃い目の味付けの店が増えているので、こういう昔からの京都の味で出されているのはありがたいですね」(中西さん)

しゃぶしゃぶコースは11000円~16000円(各税サ別)の3種あり、先付、前菜、しゃぶしゃぶ、ご飯、漬物、デザートが付く。

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伊万里の皿に盛られた名物の前菜は、ファンの多い手羽の醤油照焼、東寺湯葉の煮物、小茄子の田楽など7品ほど(写真は2人前)。季節により若干変わるが、ほぼ創業時そのままの献立だ。どれも素材の味を生かした上品な味わいで、「このボリュームに皆さん驚かれます」と、西垣さん。

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肉は亀岡の契約業者から仕入れる京都牛のA4~A5クラスで、霜降りでも赤身の部分を選んでいる。 「噛みごたえがあり、味がくどくならず最後までおいしく食べられる肉を目指しています」(西垣さん)

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しゃぶしゃぶ用の銅鍋は、初代が中国の火鍋子(ホウコウズ)をもとに日本の職人に作らせたもので、煙突部分に入れた炭火で調理する。じんわり程よく熱せられ、あくもほとんど出ないという。さっとくぐらせた上質の肉はやわらかく、噛むほどに豊かな味わいが楽しめる。しゃぶしゃぶで肉や野菜のエキスが溶け込んだスープもまた美味。

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初代が試行錯誤の末に完成させた"元祖"ゴマだれ。自家製の練りゴマに、だしとフルーツビネガー、自家製ラー油などを加えている。ゴマの風味を生かしたコクのあるたれが肉や野菜の味を引き立てて実においしい。甘くなく、普段ゴマだれが苦手な人にも好評だ。

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中西さんは、趣ある店の佇まいも店の魅力に挙げる。

「座敷に民芸風の家具や棟方志功さんの作品などが並んでいたりするんですが、かしこまった雰囲気はなく、田舎の家にいるような感じで落ち着きます」(中西さん)

初代は、河井寛次郎、黒田辰秋、棟方志功など民藝の作家たちとの親交が深く、特に棟方はここに居候していたこともあったという。店内の随所にさりげなく飾られた彼らの作品を眺めながら食事ができるのは、なんとも贅沢だ。

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料理に専念する西垣さんを、接客の面で支えるのが妻の敦子さん。

「奥さんが朗らかな感じの方で、場の雰囲気を和やかにしてくださる。結構お店の雰囲気は奥さんでもっているんじゃないかと思います(笑)」(中西さん)

「今はいろんな国の方が来られて、その楽しまれ方も文化の違いがあるのですが、どなたにも楽しんでいただけるように努めています」(敦子さん)

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「ここならおいしいものが食べられるという安心感があります」(中西さん)

この店では"いいものを安く、おいしく"という信条が代々受け継がれている。

「値段もほとんど変えていないと思います。肉の質を落とさずにずっと続けているので、肉屋泣かせですね(笑)」と、西垣さん。「お客様に満足してもらうため」妥協せず取り組む仕事ぶりに、中西さんをはじめ、多くの人の信頼を集める理由が窺える。

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■十二段家 本店

京都市東山区花見小路通四条下ル
075-561-0213
11時30分~14時、17時~20時(LO)
定休日 木(祝日の場合は水または金)
http://junidanya-kyoto.com/