BLOG割烹知新〜奇想の一皿〜2020.04.29

日本料理 とくを「春のグリーンフォンデュ」

京都を代表する和食の料理人に、和食の範疇を飛び出した奇想天外な一皿を作っていただく【割烹知新】。今回は『日本料理 とくを』徳尾真次さんの「春のグリーンフォンデュ」をご紹介します。

奇想の一皿「春のグリーンフォンデュ」

カウンター割烹の老舗『たん熊北店』などで修業し、2005年に独立した徳尾真次さん。京都が誇る割烹文化を次世代に伝えるべく、四季折々の割烹料理を用意して客を迎えます。時に包丁をマイクに持ち替え、ステージに立つこともある徳尾さんが、音楽イベントで目にした料理から発想を得た料理とは。見た目も春らしい奇想の一皿をご覧ください。

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発想秘話

以前、僕がやってる音楽と食のイベントで、『京都ネーゼ』の森さんがフォンデュっぽい料理を出したことがあるんです。それが頭の隅に残っていて、今回「和食の枠を飛び越えた料理」というお題をもらったときに、自然とチーズフォンデュが思い浮かびました。

もちろん和食の料理人が作るのですから、完全な洋風スタイルにするのではなく、和のエッセンスも取り入れたい。そこで、おだしと豆乳をベースにしたフォンデュソースを考えました。春らしさを感じてもらえるよう、えんどう豆を使ってグリーンのソースに仕上げてみようと思います。

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一般的なチーズフォンデュは茹でた野菜や魚介類、バケットなどを白ワインで伸ばしたチーズソースで食べますが、今回はフォンデュの具材として串カツをご用意します。串カツの材料はホタルイカ、ホワイトアスパラ、たけのこ、たらの芽、そしてシュガートマトの5種類。それぞれ食べやすい大きさにカットしていきます。

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たけのこ以外の野菜は生のまま、たけのこはおだしで炊いてあります。シュガートマトは当初予定に入っていませんでしたが、おかみさんの「チーズに合うし、色も映えるのでは?」という鶴の一声で採用しました(笑)。

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それぞれ串に刺したら、パン粉をつけて揚げていきます。うちは割烹屋なので、普段からフライはよくするんですよ。目の細かいパン粉をさらっとまとわせて、さっぱりと召し上がっていただきます。

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衣が油を吸いすぎないよう、目の細かいパン粉を使うのがポイントです。うちでは市販のパン粉を手でもんで、極限までさらさらの状態にして使います。細かいパン粉で素材をコーティングするイメージですね。

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ホタルイカとトマトは破裂するのを防ぐため全体にパン粉を、それ以外の野菜は見映えを考慮して片面だけにパン粉をつけます。これで串カツの下ごしらえは完了。それではいよいよフォンデュソースに取りかかりましょう。

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鍋に一番だしと豆乳を1対1の割合で入れ、火にかけます。それぞれ100mlくらい。ここに白味噌大さじ1を加えて馴染ませます。ベースが和のおだしだったり、味付けに白味噌を使うことで、和食っぽさを出していけたらと思います。

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白味噌が溶けたところで、えんどう豆のペーストを加えます。これは茹でたえんどう豆を裏ごししたもの。うちでは「えんどう豆のすり流し」を作るときにも使っています。ざるを使ってペーストをすりつぶすように溶かし入れたら、次にクリームチーズを加えます。

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チーズが少し溶けにくいので、なめらかな舌触りになるまで何度か濾します。今日使ったクリームチーズは、スーパーやコンビニでも見かける『kiri』のもの。たまたま節約系のテレビ番組で「クリームチーズを使った激安リゾット」を紹介しているのを見て、「おもしろいな」と思って使ってみました。以前、某テレビ局の番組内で"身近な食材を使った5分間クッキング"のコーナーを担当していたので、「誰でも簡単に手に入る材料」を使ってみるのもいいかと思って......。豆乳だしとの相性も良く、イメージ通りの味に仕上がったと思います。

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火を入れすぎるとえんどう豆のきれいなグリーンが飛んでしまうので、加熱しすぎないよう気を付けながらソースを仕上げます。くずでとろみを足し、さらに濾してなめらかになったところで完成です。

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先ほど下ごしらえした具材をサラダ油で揚げ、串揚げが完成。最初はソースを鍋で提供するつもりでしたが、だんだん煮詰まってしまいますし、一皿に盛るのもきれいかなと思ってワンプレートに盛り付けました。あつあつをソースにくぐらせてお召し上がりください。

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クリーミーなソースはえんどう豆の風味が感じられて、これだけでも十分おいしいのですが、揚げたての串カツに合わせるのもおもしろいでしょう? 味の濃いホタルイカも、フォンデュソースがしっかりと受け止めてくれます。生野菜に添えてディップ代わりにしてもいいですし、もちろん単品でもお酒にぴったりの酒肴になります。

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僕はカウンター割烹の店で修業させてもらったので、自分の食べたいものを好きなように注文できる「割烹文化」に誇りとこだわりを持っています。実は開店から半年はいろんな準備が整わず、コースしかご用意できなかった。だから「割烹」とは名乗らず、あえて『日本料理 とくを』として暖簾を上げました。「割烹」を名乗るには、それだけの覚悟が必要だと思うからです。

割烹には持久力に加え、お客さんの要望にすぐに応えられる瞬発力が必要です。オーダーが通ってからしか準備できないものが多く、お客様にずいぶん鍛えられました。お昼しかお越しになれない方のためにランチ営業も続けていきたいですし、「割烹文化を次世代に伝えていく」という使命感を持って、これからも精進していきたいと思います。

撮影 鈴木誠一 取材・文 鈴木敦子

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■日本料理 とくを

京都市下京区木屋町通仏光寺上ル
075-351-3906
12:00~14:00(最終入店12:30)、18:00~22:00(最終入店20:00)
定休日 日曜・月曜の昼 ※日曜が祝日の場合は翌日休

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「料亭」では、座敷で、床の間のしつらえ、庭の景色、女将さんや仲居さんの所作、季節の空気の色をふくめて、空間ごと「静」の美意識を五感で感じることができます。 「割烹」では、カウンターの目の前で、調理、盛りつけといった料理工程や、大将や、二番手、三番手の料理人の所作を見ながら、「動」の美意識を体感することができます。このコーナーでは、京都知新編集部のスタッフが実際に行ったことがある店の中から、【この店に行けば、そんな静と動の美意識を味わえる】「料亭」と「割烹」をご紹介いたします。

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