BLOG割烹知新〜奇想の一皿〜2020.09.12

佳肴 岡もと「焼き茄子の冷製スープ」

京都を代表する和食の料理人に、和食の範疇を飛び出した奇想天外な一皿を作っていただく【割烹知新】。今回は『佳肴 岡もと』岡本良太さんの「焼き茄子の冷製スープ」をご紹介します。

奇想の一皿「焼き茄子の冷製スープ」

名店の誉れ高いカウンター割烹での修業経験から、自身もカウンタースタイルにこだわりたかったと話す岡本さん。L字に配した客席すべてに目を配り、食事を楽しんでもらうための雰囲気づくりに心を砕きます。ストーリーを感じさせる料理とお酒、そして細やかな接客が楽しめる注目の一軒です。

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発想秘話

誰でも手に入れやすい旬の野菜ということで、メイン食材は茄子にしました。これからの時期は秋茄子も美味しいですしね。茄子自体は平凡な食材ですが、やりようによっておもしろいものが作れるんじゃないかと思います。

夏野菜って油との相性がすごくいいんですよ。茄子の揚げびたしとか最高でしょう? でも今回は単に油で揚げたり焼いたりするんじゃなく、油を茄子に「閉じ込めて」みたいと思います。では作っていきましょう。

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京都中央市場が近いので、ほぼ毎朝買い出しに出掛けます。産地にこだわらず、僕の料理の表現方法にハマりそうな食材は積極的に取り入れるほうですね。たとえば石垣島のアセロラを焼き物のソースに使ってみたり...。といっても、あくまで日本料理としての一線を越えず、奇抜になり過ぎないよう気をつけています。

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途中までは焼き茄子を作る手順と同じです。まずは茄子を強火で焼いていきます。長く焼き過ぎると水分が抜けて身がかすかすになり、繊維質もぼろぼろになってしまうので、短時間で一気に中まで火を通します。

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茄子の香りが十分出て、尚且つみずみずしさが失われない程度に焼き上げたら、氷水の中で皮を手早く取り除きます。

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皮をむいた茄子を適当な大きさに切り、裏ごしします。繊維や種が残らないよう、しっかりと力を込めてなめらかなピュレ状に。焼き茄子の香ばしい香りが立ち上がってきます。

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ここからいよいよ茄子に油を閉じ込めていきます。イタリアンではパスタソースに茹で汁を加えて乳化させますが、和食で「乳化」の手法を使うことはほぼありません。僕らが「たまごのもと」と呼んでいる、酢の入らないマヨネーズ状のソースを作る時ぐらいでしょうか。

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今回はブレンダーを使い、太白の胡麻油で茄子のピュレを乳化させ、油のコクを茄子の中に閉じ込めてしまいます。この胡麻油は胡麻の香りが少ないので、焼き茄子の香りを打ち消さず、深みだけがプラスされます。油のほかには白味噌、豆乳、醤油を少々。乳化すると全体的に白っぽい色に変化していきます。

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最後に出汁を少し加えます。出汁醤油とオイルはとても相性がいいので、少し出汁を加えるだけで風味がガラッと変わるんです。焼き茄子特有の焦げたような香りとも相性抜群です。冷やしたほうがおいしいので、氷水で冷やしてから盛り付けましょう。

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絹サヤと花穂紫蘇、胡麻油で作った人工キャビアを乗せて完成です。この胡麻油のキャビアは口の中で弾けるまで香りがしないので、胡麻油を直接垂らすよりいいかなと。質感も加わりますし、温冷どちらの料理にも使えて便利なアイテムですね。

どうですか? まさに「飲む焼き茄子」って感じでしょう? このままソースとして使ってもおいしいんじゃないかな。肉や魚にも良く合うと思います。

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僕は瀬戸内海の小さな島の出身なんですが、やはり独立するならレベルの高いところで勝負したいと思って京都に店を構えました。料理学校を卒業後、『京都吉兆』や大阪の天ぷら専門店、京都の料亭などで修業をし、『上賀茂 秋山』(https://www.kyoto-chishin.com/shoku/shokuchishinblog/kappo/73702.html)を最後に独立しました。最も影響された料理人は、間違いなく秋山さんですね。秋山さんからカウンター割烹のおもしろさや醍醐味を教わりました。あの経験があったからこそ、今ここでカウンターの店をやっているんだと思います。料理を出して「あとはお好きにどうぞ」というのではなく、料理の詳細やストーリーを直接お伝えしたいし、それらを知った上で食べていただきたい。お客様の反応を見ながら、より楽しんでもらえるようなお手伝いもしたい。

僕の接客する姿を見た妻が「こんなにしゃべる人じゃなかったのに...」って驚くんですが、そのような接客術も含めて、秋山さんから教わったものは本当に大きいですね。

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「今日は岡本のところへ行こうかな」と、ちょっとだけ足を伸ばして来ていただきたい。そんな思いもあって、街の中心部から少し離れたこの場所を選びました。料理は13,500円(税込)のおまかせ一本のみ。僕自身が好きということもあるのですが、日本酒は常時60種類ほど揃えています。小さめのグラスを用意しているので、料理に合わせていろんなお酒を味わってもらえるとうれしいですね。

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撮影 鈴木誠一 取材・文 鈴木敦子

■佳肴 岡もと

京都市東山区馬町東入ル南側常盤町470-4
075-551-1055
17:30~22:00(L.O.)
月曜、毎月最終日曜休

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「料亭」では、座敷で、床の間のしつらえ、庭の景色、女将さんや仲居さんの所作、季節の空気の色をふくめて、空間ごと「静」の美意識を五感で感じることができます。 「割烹」では、カウンターの目の前で、調理、盛りつけといった料理工程や、大将や、二番手、三番手の料理人の所作を見ながら、「動」の美意識を体感することができます。このコーナーでは、京都知新編集部のスタッフが実際に行ったことがある店の中から、【この店に行けば、そんな静と動の美意識を味わえる】「料亭」と「割烹」をご紹介いたします。

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