BLOG料理人がオフに通う店2019.03.28

「リストリア ラディーチェ」―「Bini(ビーニ)」中本敬介さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回はイタリアン「Bini」の料理人、中本敬介さんが通う「リストリア ラディーチェ」です。

Bini」中本敬介さん

プロフィール

広島県出身。 広島、東京のイタリアン、フレンチレストランを経て26歳でイタリアへ渡る。4年半のイタリア修業後、スイスのサンクトガレン「Segreto」の開業に伴いシェフに就任。和食材を用いた「日本人らしいイタリアン」で注目を浴びる。8年の就任期間を経て帰国。京都大原の山田農園の卵に出合い、2010年に哲学の道近くに店を構える。2017年に丸太町の町家へ移転。スイス時代を共に過ごした妻の理恵子さんと二人三脚で自分の味を追求し続けている。

おすすめコメント

イタリア修業という共通の経歴に興味を持っていただき、根本義彦シェフが私のお店に来てくださいました。まだ哲学の道近くの前の店でした。その日最後のお客様だったのでゆっくりお話しさせていただいたところ、イタリアで共通の知人がいることがわかり意気投合してからのお付き合いになります。

修業の地域は違いましたが、根本さんのお料理をいただくと、イタリアの風を感じて懐かしくなります。と同時に、和食の経験もあるので、驚きの技法がイタリアンに取り入れられていて料理人として刺激的でもあります。

リストリア ラディーチェ

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「ラディーチェでは肩ひじ張らずにすごせる空気が流れています。それでいて料理のレベルは非常に高い。このバランスが見事です」と言う中本さん。それを受けて妻の理恵子さんも「天井がとっても高くて開放感にあふれています。お昼は暖かな陽が差し込み、夜はしっとりと店内の明かりがともる。どちらもとても居心地がよくて。それにしても、この天井高はうらやましいです(笑)」と微笑む。

「リストリア」とは聞きなれない言葉だが、これは「リストランテ」と「トラットリア」を融合させた造語だ。「カジュアルな雰囲気で、本格派のイタリアンを提供する店を」というオーナーシェフの根本義彦さんの想いが込められている。

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ボロボロだった民家を改装して2階分の天井高を取り、インテリアも店内もウッド調にまとめあげたラディーチェは、2013年に丸太町にオープンした。

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「オープン時に植えられたオリーブの木が、うかがうたびに大きく育っています」(理恵子さん)

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「根本さんは、もともと和食の料理人でした。15歳から会席料理を学び、高校卒業後は京都の『浜作』、北新地の割烹と10年以上に及ぶ経験をお持ちです。だからイタリアンのなかに和食の技法が取り入れられていて、とても勉強になります」(中本さん)

中本さんがより感銘を受けたのが魚料理だそう。

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「ヨーロッパは肉食文化です。私もそこでの12年の修業を経て肉料理には自信があるのですが、魚料理には縁がなくて。日本に戻ってきてから魚料理ときちんと向き合いはじめました。和食には魚は欠かせません。根本さんの和食料理人の経験が活かされた魚料理は、いつかそのレベルに届きたいという私の目標です」(中本さん)

「甘鯛のアクアパッツァ」は、皮はパリッ、中はジューシーに焼き上げられている。中本さんはその火入れに魅了されたという。技法について根本さんに聞いてみると――。

「甘鯛は鱗(うろこ)を立てて皮だけを焼いています。これは和食の技法ですね。具だくさんのイメージがあるアクアパッツァなので、私の皿は一見すると意外に思われるかもしれません。でも、スープはアサリ、トマト、ブラックオリーブなど基本のアクアパッツァの素材をミキサーにかけた後こして、余すことなく楽しんでいただけるようにしているんです。技法は和食も取り入れますが、味はイタリアンであることを守っています」(根本さん)

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「根本さんは魚ばかりでなく、肉料理も素晴らしいんですよ。肉料理については深く学んできたからこそ、そのすごさがわかると自負しています(笑)。生産者の元へ足を運び、密にお付き合いされている姿勢も尊敬しています」(中本さん)

魚に馴染みがなかった中本さんに対して、根本さんは肉に弱かったという。

「イタリアでの修業時代は海沿いの町にいたので魚料理が中心でした。ですので日本に戻ってから肉について勉強しなおしたんです。肉には個体差があるので、生産者と関係を紡いでいかないと、いい肉を手にすることはできません。肉が悪いのではなく、生産者との仲が良くないからいい肉に出合えないのだと私は思います」(根本さん)

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「丹波牛のイチボの炭焼き 桜の香りをつけて」は、イチボが桜の木でほんのり燻製されている。肉はやわらかく、さっくりと噛み切れると同時にふわっと桜の香りが鼻へ抜けていく。

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「トルテッリーニ イン ブロード」はイタリア・ボローニャで食べられている、豚肉を詰めたスープパスタ。本場ではもっと小さいそうだ。クリスマスの定番料理で、ラディーチェでも毎年12月に提供されている。

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「根本さんのデザートは目の前で仕上がっていくのでとてもライブ感があり、わくわくします。『イチゴとシャンパーニュ』は、シャンパーニュのソルベにイチゴの酸味がさわやかに重なり、ふわりとした生クリームとチーズのムースが包み込みます。そして最後には、これまた自家製の小菓子がお茶と一緒に出されて、大満足のフィナーレを迎えることができるんです」(中本さん)

北新地での割烹で料理長の打診がきたとき、根本さんは弱冠25歳。「今の自分で大丈夫だろうか? もっと勉強がしたい」と、喜びよりも不安が募ったという。同じころ、休日にフレンチを学んでいたシェフから「きみは性格的に繊細なフレンチよりも、大らからなイタリアンタイプ」と言われたことが心に残った。そして「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務シェフの著作を読んだことがとどめとなって「イタリアンをやろう!」と舵を大きく切った。

それから2年間の準備期間を経て、ついに2006年にイタリアへ渡り、アドリア海近くのエミリア・ロマーニャの「リストランテ マニョーリア」で修業を積むことに。海外で料理修業をする日本人の多くは半年ほどで違う店へ移るが、根本さんは2年近くマニョーリアに腰を下ろし続けた。

「私は人と出会い、つながっていくことが大好きですし、大切に思っています。店との関係も同じです。2年近くマニョーリアにいたからこそ、料理だけでなくデザート部門まで経験することができました。そこでデザートを叩き込まれ、つくることも好きになったんです」(根本さん)

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ランチ5000円(税込)、ディナー12960円(税込)。「これでいいや」ではなく「もっと美味しくなるのでは!?」と常に考え根本さんは料理を組み立てていく。

「主人は独特の間でしゃべるのですが、根本さんはそこに絶妙な合いの手を入れてくださるんです(笑)。とても貴重な方です」(理恵子さん)

そんな根本さんを、中本さんはとても大切に想っている。

「根本さんは通信制高校の部活動で製菓を教えていらっしゃいます。生産者にも会いに行かれるし、ご自身の料理の勉強もされている。いったいいつ寝てるの? と思うほど精力的に活動されています。そんな根本さんは朗らかでお話も楽しく、お客様みなさんから愛されています。私も店が近いので、わざわざラディーチェの前を通って"根本さんいるかな?"なんて覗いてみたり。ストーカーのようです(笑)。

私は先に料理人の方と親しくなり、その人柄に惹かれてお店に通うようになります。料理はもちろんですが、"根本さんに会いたい"という気持ちも、ラディーチェへ足を運ぶ大きな理由なんです」(中本さん)

撮影 エディオオムラ  文 竹中式子

■リストリア ラディーチェ

京都市中京区鏡屋町50
075-256-5550
夜18:00〜23:00 (L.O.21:30) 
金・土・日・祝日昼11:30〜15:00(L.O.13:00)
定休日 水曜、不定休

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