BLOG料理人がオフに通う店2019.04.16

「韓式料理 ピョリヤ」―「一之船入」料理人 魏 禧之さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は中華店「一之船入」の料理人、魏 禧之さんが通う「韓式料理 ピョリヤ」です。

「一之船入」魏 禧之さん

《プロフィール》
神奈川県横浜市に生まれ、11歳の頃から実家である横浜中華街の湖南料理店「明掦」で働きはじめる。18歳より全国の有名中華料理店で修業を積み、その後中国へわたり特級調理師の資格を取得。帰国後は横浜「萬珍楼」での修業を経て、1996年に京都に「創作中華 一之船入」を開く。風情ある元お茶屋の空間で、身体に優しい中華が味わえると、全国から多くの人々が訪れる。さらに、「魏飯夷堂 三条店」「魏飯夷堂 北新地」をオープン。2017年にはアジア中国料理トップ10シェフ殿堂入りを果たす。

魏 禧之さんのおすすめコメント

完全紹介制の韓国料理店ですが、京都知新のサイトをご覧の方には特別にご入店いただけるという、私のとっておきをご紹介します。

前回に続いて女性料理人がきりもりされています。メニューは、月替わりのお鍋のコース1種類のみ。仕事終わりに週1~2回は妻と立ち寄り、わがままを聞いてもらっています。オーナーシェフとはとても長いお付き合いなのですが、その関係はぜひ紹介文をお読みください(笑)。

韓式料理 ピョリヤ

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20189月にオープンしたばかりのピョリヤは、魏さんのお店「一之船入」からも歩いて5分ほどの河原町御池近くのビル3階にある。

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カウンターの中で、きびきびと料理を用意されているのが、オーナーシェフの星野明香さんだ。

「星野さんは京都で長らく、料理教室『サロンドサラン』で韓国料理を教えていらっしゃいます。お母さまから韓国の家庭料理を、そしてソウルの宮中飲食研究院で宮廷料理と伝統料理を学ばれました」

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星野さんの生家は京都のキムチ販売の老舗・ほし山で、今は取締役を務めている。キムチの仕事、サロンドサロンでの料理講師、ピョリヤのシェフと3足の草鞋を履いてそれぞれの仕事に邁進。その3つの仕事を貫いているのは「食べるというのは、文字通り人を良くするということ。食事は"健やかな身体"を作るもの」という考えだ。

なので、調味料は工場で大量生産されたものではなく、職人が蔵で丁寧に作ったものを。精製された白砂糖は使用しない。素材がもともと持っている味を引き出すことを心がけている。

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月替わりの「鍋コース」7000円(税別)には、鍋を含めてなんと約9品も! 写真の「前菜盛り」はこれで1人前、テーブルに表れたとき思わず「おおっ!」と歓声を上げてしまう。こちらも内容は月替わりだが、だいたい11種類くらい盛られるそう。

「お酒に合う前菜をご用意しています。韓国の伝統的な料理もあれば、アレンジを加えたものも。『芥子和え』(写真中央右)は宮廷料理の一つですが、そこに豚足を加えました。クリームチーズとチャンジャを合わせて、玄米のおこげをクラッカー代わりに召し上がっていただくスタイルは当店オリジナルです(手前右と中央)。分量が多く見えますが、ほとんど野菜なのでおなかが重くはなりません。この前菜盛りだけで2時間ほどお酒を楽しまれるお客様もいらっしゃいます(笑)」(星野さん)

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食事の合間には、食欲を促す水キムチがグラスで供される。実はこの水キムチが、魏さんと星野さんの間での議論の元になったとか。

「本来、水キムチは米のとぎ汁と塩だけで発酵させるものです。それだけで十分滋味深いのです。でも日本人にとっては味が薄いからと、日本では昆布を入れて旨みを足すことが主流になっています」(星野さん)

「その昆布を、星野さんも入れるべきか否か? ということで2時間くらい討論しました(笑)」(魏さん)

さて決着は......? 「昆布を入れない」でついたそうだ。かぶやリンゴ、ラディッシュ、金時人参など旬の京野菜も漬け込んだ水キムチには、素材の旨みが溶けだしている。
※水キムチの提供は月による

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今回ご用意いただいた鍋は「ソゴギチョンゴル」。宮廷料理のひとつで、日本人にもなじみのあるすき焼き風だ。玉ねぎ、大根、しいたけ、ネギ、セリ、ワケギ、人参、赤パプリカとたくさんの野菜から水分が出てくるので、出汁の量は控えめ。出汁も昆布と薄口しょうゆのみで、野菜の旨み、甘みを引きたてている。

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鍋を火にかけ、野菜がしんなりするまでよくまぜると、熟成肉で有名な中勢以の牛肉に野菜の味が見事にからみあう。お好みで生卵につけて。

※ご予約の際に「京都知新を見た」とお伝えいただければ、何月でもソゴギチョンゴルを用意していただけます。3日前までに要予約

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「私は最近はハイボールばかり飲んでいるのですが、ピョリヤには韓国のお酒も豊富で、妻はマッコリがお気に入りです」(魏さん)

左から、韓国の焼酎の「チョウムチョロム」と「ファヨ」。マッコリの「ポクスンドガ」と「華本生マッコリ」。「ポクスンドガ」はマッコリのシャンパーニュとも言われている生マッコリで、とても珍しい銘柄だ。

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穀物をベースとした韓国の伝統酒「プンチョン」。ワインのような味わい。

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お酒を選んでいるのは夫の聖司さん。前述の発泡マッコリ「ポクスンドガ」は聖司さんが初めて京都で取り扱った。ワインにも造詣が深く、リーズナブルなものからオーパスワンまで幅広くそろえる。料理に合わせて楽しんでほしいからと、グラスワインの種類も多い。

「おふたりとは、実は30代からの飲み友達なんです。当時は仕事について話すこともなく、何者でもないただの友人として、ディスコで一緒に踊っていました(笑)。

その頃、新町にイタリアンレストラン『アメディオ』をオープンされます。当時はまだ星野さんはお店のお料理にはノータッチでしたが、3年ほど前にイタリアンのシェフが退職され、星野さんが韓国料理を提供するようになりました。その場所が立ち退きになり、移転先のこの場所でピョリヤが誕生したんです」(魏さん)

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月替わりの鍋は今までに「タッカンマリ」「ユッケジャンスープのしゃぶしゃぶ」「プデチゲ」などが登場した。

「お店は夜9~10時以降はバータイムになって、鍋のコースは終了です。でも私の店の閉店後にうかがうと、どうしてもバータイムになってしまうんですよね。そこで星野さんにお願いして、特別に鍋だけを出していただいてます。自分の店から海鮮を持っていって、調理してもらうこともあります(笑)」(魏さん)

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星野さんは上級食育アドバイザーの資格を持っている。

「コースを通して、栄養をバランスよく摂っていただけるよう構成しています。韓国の宮廷料理は野菜中心の優しい味わいです。みなさんがイメージしている"辛い""味が濃い"というものとは真逆なんです。そんな宮廷料理や伝料理をベースに、一辺倒ではなく飽きないようにいろいろな味付けを工夫しています。そして私は京都で生まれ育ったので、京都の素材も使いたいんです」(星野さん)

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「僕の星野さんのイメージは、とても勉強熱心な素晴らしい"料理の先生"です。日本で韓国料理を作ることについて、お互いの意見を語り合うのもとても刺激的です」(魏さん)

長年の友と今、"料理"という舞台で、若い時とはまた違う楽しい時間を共有している――そんな素敵な関係の、魏さんと星野さん夫婦なのだ。

撮影 エディオオムラ  文 竹中式子

■韓式料理 ピョリヤ

京都市中京区御池通河原町下る 下丸屋町401 福三ビル3F
075-221-0605
18:00~24:00 席が空き次第バータイム(だいたい21:00以降)
※バータイムはコース料理は提供されません
定休日 月曜。不定休で連休あり
※要予約、紹介制(「京都知新を見た」と予約の際にお伝えすれば入店可)

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