BLOG料理人がオフに通う店2019.06.13

「食堂おがわ」―「洋食おがた」緒方博行さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は洋食店「洋食おがた」の料理人、緒方博行さんが通う和食店「食堂おがわ」です。

「洋食おがた」緒方博行さん

《プロフィール》

熊本県出身。熊本のニュースカイホテル、長崎ハウステンボス内のホテルヨーロッパなどを経て、肉料理で名高い京都の「ビストロ セプト」の料理長をオープンから6年間務める。2015年に独立、「洋食おがた」を開き、ハンバーグやエビフライなどの本格的な洋食に、和のテイストを加えたメニューなどを、カウンターの"洋食割烹"スタイルで提供する。尾崎牛や平井牛、焼津の「サスエ前田魚店」から取り寄せる魚、鹿児島県の「ふくとめ小牧場」の幸福豚など、全国各地の厳選した素材で「大人の洋食」をつくり上げる。

仕事終わりに、ひとりでふらり。大人のにぎやかさに酔いしれる

「たまらなく出汁を身体が欲しているとき、仕事帰りにふらりと訪ねるのが『食堂おがわ』さんです。予約の取れない店ですが、21時ごろだと、ひとりなら席が空いていることがあるんです」ogawa-0004.jpg

木屋町四条の細い路地に、夜になると灯りをともす「食堂おがわ」。のれんをくぐると、思い思いに料理と酒を楽しむ大人たちが、夜ごとカウンターを囲む。

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「洋食おがたもカウンターメインですので、割烹スタイルの勉強にもなるんですよね。おがわさんは、いつうかがってもお客さんでにぎわっていますが、決してうるさくはありません。ほどよいガヤガヤ感が居心地いいんです。お料理をつまみながら日本酒をいただいて、顔見知りのお客様がいらっしゃったらお話ししながら、2時間くらいすごしているんですが、だんだん自分が料理人であることを忘れてしまいます(笑)」

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「店主の小川真太郎さんは、ひとりでもちょうどいい量で料理を出してくださいます」という緒方さんの言葉に、小川さんは「量はかなり意識しています。おひとりごとに分量を変えたり、シェアしてお出ししたり」と応える。

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「うちのメニューの7割は定番です。そこに季節の魚が入ってきます。しょうがかきあげ(税別700円)、やはた巻(税別1600円)など人気が高いですね。ぐじの料理は例外としても、ほかはどれほど高くても、基本的に2000円までに納めるようにしています。アラカルトで食べて飲んで少々無茶しても、想像できる予算内で召し上がっていただきたくて」(小川さん)

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数あるメニューのなかで、緒方さんのお気に入りのひとつが、うどてっぱい(税別700円)。うど、わけぎ、赤貝(日によってタコやバイ貝など)を、白味噌と卵の黄身に酢をまぜあわせた酢味噌とからしで和える。

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「目の前でつくられていくライブ感がいいんですよ。うどはしゃきしゃきとしていて、具材が酢味噌とよい塩梅でなじんでいます」(緒方さん)

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ぐじのおつくり(税別2500円)は、口の中に甘みのあるねっとりとした食感が広がる。緒方さんは「おがわさんのおつくりの魚は、とても鮮度がいいんです」と絶賛する。

「毎日市場で魚を見て触っています。市場で出会う料理人の方々との情報交換も有意義ですね。でも何よりお客様の反応がいちばん参考になります」(小川さん)

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「緒方さんがえらく褒めてくださった」と小川さんが言うのが、うど天ぷら(税別1000円)。1本丸ごと揚げたうどを手渡しされ、丸かじりする。サクッとした食感と、みずみずしさのなかにほのかな苦みがあり、なんとも春らしい。

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ふんわりと巻きあがった、だしまき(税別500円)には、和食の手法が取り入れられているという。

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「かつお節を利かせすぎず、昆布を利かせています。そうすると、すっと透き通った、切れのある味わいになるんです」(小川さん)ogawa-0016.jpg

福岡県出身の小川さんは、20代前半に京都へやってきて、仕出し屋に勤めはじめる。しかし、なかなか調理に関わることができず、岡持ちを運ぶ日々を重ねていたそうだ。そこで6年目に一念発起して、先斗町の割烹「余志屋」へ。3年後には祇園「さ々木」でも修業を重ね、2009年に独立を果たした。

「店名に"食堂"と付けているように、食堂や居酒屋みたいに気軽に入れるようにしたい。でも料理はくだけすぎず、ちゃんとした味の和食を食べられる店でありたい。つまり自分が行きたい店をつくったんです(笑)」(小川さん)

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緒方さんと小川さんは、ワインバーの客同士として出会い、お互いの店を訪ねるようになったという。

2009年にオープンして1年経たぬ間に、もらい火による火災でお店が焼けてしまったんです。意気消沈している私を緒方さんはなぐさめて、相談にのってくださいました。料理人としても知識の豊富な、とてもありがたい先輩です。肉の火入れなど、和食以外のことや、わからないことがあったらいつも頼っています。日本酒についてもよくご存じなので、緒方さんに教えていただくこともしょっちゅうです」(小川さん)

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緒方さんにとっても、小川さんは大切な存在だ。

2010年に今の場所に移転されてから、瞬く間に大人気になって、なかなか入ることができなかったんです。今もそういう状況は続いていますが、落ち着いた時間帯を狙ってちょくちょく顔をだせるようになりました。
小川さんとは、7~8人の料理人仲間と一緒に、年に1回、"大人の修学旅行"と称して名古屋や静岡まで食事に行っています。そうしてお店以外でも共に見地を深められる関係でいられるのが、とてもうれしいですね」(緒方さん)

撮影 津久井珠美  文 竹中式子

■食堂おがわ

京都市下京区西木屋町四条下る船頭町204 1F
17:30~23:30(L.O.22:30)
定休日 水曜、月最後の火曜

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