BLOG料理人がオフに通う店2019.07.17

「ryuen」―「食堂おがわ」小川真太郎さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は和食店「食堂おがわ」の料理人、小川真太郎さんが通うイタリアンレストラン「ryuen」です。

「食堂おがわ」小川真太郎さん

ogawa-0016.jpg

《プロフィール》
福岡県出身。福岡の居酒屋に勤めた後、20代前半に京都へ。仕出し店で約5年間修業を積み、その後先斗町「余志屋」、「祇園さゝ木」で腕を磨いて2009年に独立。2010年に現在の地へ移転。上質でいて手ごろ価格な料理が評判となり、最も予約の取りづらい店の1軒といわれるように。20197月には2号店「食堂みやざき」を開店する予定。

鉄の魂を持つシェフに、憧れがつのりすぎる

「ひと皿ひと皿に魂がこもっている。食べると元気になる――それがryuenさんの料理です」

その口調にも熱がこもる、小川さんのあふれんばかりの熱愛店が、烏丸御池のイタリアン「ryuen」だ。

_DSC1264.jpg

オーナーシェフの竜円威人さんがこの地に店を構えたのは、2005年のこと。10年を経て、店内も外観も全面改装。テーブルもカウンターも木のぬくもりにあふれる、ナチュラルな空間となった。

_DSC1139.jpg

33歳でオープンしてから年々、自分が変化していることを感じていました。料理への向き合い方は変わりませんが、若い頃は薄かったものが、年を経て厚くなったといいますか。進化するとともに「深化」しようと、掘り下げて考えることができるようになりました。

そんななか、10年という節目に、新たにアクションを起こしたいと思ったんです。移転も考えたのですが、ここ以上の場所がなくて。そこで全面改装に踏みきりました。私は自分に正直に生きたいと思っています。だからまた10年経ったら、まったく違う形でアクションを起こすかもしれません(笑)」(竜円さん)

_DSC1183.jpg

自身の店の片づけが早めに終わった日、ゆっくり料理とワインを食べたくなった時に、小川さんはryuenを訪ねるという。

「竜円さんの料理はぶれません。そしてここでしか食べることのできない唯一無二の料理。そのようにい続けられるのは、流行に流されない鉄の魂を持っていらっしゃるからです。私もそうなりたいと思って料理をしています」(小川さん)

DSC_6996.jpg

ryuenはアラカルトのみ。小川さんの定番は「熊本産 馬肉のカルパッチョ しょうがのバーニャカウダ 霜降り」(税別3000円)だ。竜円さんは馬肉の本場・熊本県まで上質な肉を探しにゆき、おばあさん2人が営んでいる小さな肉屋と巡りあった。
「とろける馬肉、上質なオリーブオイル、スライスオニオン。私の好きなものしか載っていません。すりおろしたしょうがが入ったバーニャカウダソースと一緒にいただくと、ワインが進むんです」(小川さん)
和の馬刺しをイメージして口にすると、イタリアンの味わいになっていることに驚く。スライスオニオンに甘い醤油、しょうがでいただくのが熊本スタイル。それをアレンジし、馬肉は見事にイタリアンへと昇華した。

DSC_7021.jpg

さらに外せないのが牛肉料理。
「いつもryuenさんのメニューの中の、その時一番の牛肉を食べます。つけあわせの野菜も楽しみのひとつなんですよね。野菜は基本的に、京都吉祥院の農家・石割照久さんか、福岡県糸島のシルビオ・カラナンテさんの作る野菜、つまり農家直送のものだけを使ってらっしゃいます。野菜本来の旨みがとても濃いです」(小川さん)

写真は「宮崎県産 尾崎牛 肩ロースのポワレ 生わさびのソース」(税別5900円)。絶妙な火入れ加減で、表面は香ばしく、中はふわっとやわらか。肉を食べている充実感は満点なのに、驚くほどさっぱりとしている。すりおろした山芋でトロミのついたソースが、その軽やかさの一端を担っているようだ。

「私はバターやオリーブオイルはあまり使わず、和の食材をもちいて味付けすることが多いんです。ここは日本で、私も日本人。だから和の食材を使うのはとても自然なことだと思います。食材の味、水、気候は、イタリアと日本では全く違います。イタリアと同じことをしようとしても無理が出てきてしまう。日本人であると意識することが"美味しい"につながるのではないでしょうか。イタリアやフランスのワインの生産者の方もお見えになるのですが、みなさんこの日本式イタリアンを、とても喜んでくださいます」(竜円さん)

_DSC1194.jpg

オープンは深夜1時まで。小川さんのように閉店後に、お腹を満たすために訪れる料理人がたくさんいるという。竜円さんは修業時代、閉店後に訪れて「ちゃんと手をかけた食事」のできるレストランがあまりにも少ないことから、自分の店はそうありたいと1時まで店を開けることにした。
「なので、私がお店を閉めた後に行けるお店は、1~2軒になってしまいました(笑)」(竜円さん)

小川さんはそんなryuenならではのエピソードを話してくれた。
「ある日、お店にいらっしゃるお客様すべてが、顔見知りの料理人だったことがあります。どなたかがお帰りになるたび、みんな席を立って挨拶しあって。まるで料理人サロンのようで面白かったです」(小川さん)
子供のころに観た料理バトル番組「料理の鉄人」で、きびきびと美しい料理をつくり上げる料理人の姿に夢中になったという竜円さん。なかでも憧れの存在だったフレンチの三國清三シェフも、ryuenを訪れるそうだ。
「さすがにその時は、私だけでなく、お店中に緊張感が走ります(笑)」(竜円さん)

_DSC1249.jpg

修業時代の常連客に教えてもらい、ryuenに通いだして10年以上。小川さんの竜円さんへの想いは年々強くなっている。

ryuenさんには友人、お客様、スタッフ、そして大事な人とうかがいます。どなたを、どんな時にお連れしても、みなさんに喜んでいただけるんです。誰と行くかはあまり決めていませんが、ひとりで行ったことはありません。憧れの店なので、恥ずかしくて(笑)。ひとりで行く勇気がないんですよ。竜円さんを愛してるんです」(小川さん)
_DSC1160.jpg

その言葉を聞いた竜円さんは「何をおっしゃっているのか(笑)」と笑顔に。
「小川さんとプライベートでのお付き合いはありませんが、お店にいらっしゃるとテーブルにうかがってお話をさせていただきます。
連日連夜、『食堂おがわ』が満席なのは、料理とともに小川さんの人柄、想い、在り方が、お客様に伝わっているからなのだと思います。シャイな方なので、前面にはそういう姿を出さず、ユーモアで隠してしまわれますが、私はそんなところも含め、"ちゃんとしている"小川さんが大好きです」と竜円さんも小川さんへの愛を語ってくださった。

_DSC1174.jpg

小川さんはイタリアンレストランで少し働いていた時期があり、イタリアンの世界にも憧れがあるという。

70歳、80歳になっても、左手にフォカッチャを持ちながら足を組み、斜め45度に構えて、パスタを食べながらパンをちぎりワインで流し込む。その姿が似合う白髪のおじいさんになりたいと思っております」(小川さん)

そんな小川さんの姿を見かけることができるのは、やはりryuenに違いない。

撮影 鈴木誠一  文 竹中式子

■ryuen

京都市中京区三条通室町西入ル衣棚町39
075-211-8688
18:00~翌1:00
定休日 木曜

食知新

Recent