BLOG料理人がオフに通う店2019.08.27

「Bar K6」ー 「蛸八」掛谷浩貴さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は割烹「蛸八」の主人、掛谷浩貴さんが通う「Bar K6」です。

「蛸八」掛谷浩貴さん

《プロフィール》
京都生まれ京都育ち。京都の料理屋などで修業を積み、1999年に実家である「蛸八」に入店。当初は先代の父とともにカウンターに立ち、2016年に先代が亡くなり店を継ぐ。誠実な料理や芯のある接客にはファンが多く、若手料理人たちの兄貴的存在でもある。

旨い酒&フードに上質のもてなし。京都のナイトシーンを牽引する名バー

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木屋町二条にある「Bar K6」といえば、京都の酒好きの間では必ず名前が挙がるほどの人気バーだ。京都を代表するバーテンダー・西田稔氏が、1994年に現在の場所で開業。今年3月に25周年を迎えた。ここで初めてカクテルの味を知ったという人も少なくないだろう。この店を推薦した掛谷さんにとっても、若い頃の思い出深い店だったようだ。

「初めて行ったのが20代前半の頃。お酒も飲めないのに、ここのバーは凄いぞという噂を聞いて行きました。そこには西田さんがおられ、酒も飲めない僕がいちびって(調子に乗って)、『すんませ~ん、こんな感じの作ってください』って言うと、ほんまにこんな感じのやつが出てきて感動したのを覚えています。カウンターに埋められたライトに照らされたカクテルが最高に綺麗で。そして西田さんのかっこよさ、何よりも西田さんの作ったカクテルのおいしさ最高でした」と、掛谷さんは当時を振り返る。

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現在の店内は、オーセンティックな2つのバーカウンターとテーブル席がある空間だが、創業当時は違ったと、チーフバーテンダーの澤真吾さんは言う。

「掛谷さんが来られたのはまだオープンして間もない時で、このカウンターとテーブル一つだけの小さなお店だったんです。その当時は照明ももっと暗くて、ライティングでカクテルが浮かび上がるような印象を持っていただいていたのだと思います」

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「当時は、バーやのにお酒が弱いものでフードを頼む方が多かったと思います。フードばかり頼んでたら悪いなと思って、それから行かなくなっちゃって」と、掛谷さん。長く足が遠のいてしまっていたが、今年、20年ぶりに店を訪れたという。

「カウンターには西田さんはもう立っておられないですが、僕の大好きな澤さんが立っておられます。澤さんはうちにも来られていて『K6』に行きたいなぁって思ってたんです。

澤さんに、『こんな感じのください』と頼むと、やっぱりこんな感じのやつが出てきて、感動しました!」(掛谷さん)

実は、澤さんは十数年来「蛸八」に通う常連で、掛谷さんとは顔なじみなのだそうだ。

「僕は和食好きで、20代の頃から飲食の仕事の勉強も兼ねて行かせてもらっていました。当時はお父さんが大将でやっておられて。あんな素敵なお店はもうなかなかないと思いますね。3年ほど前、お客様に「蛸八」さんへ連れていっていただいた時に、僕のことを紹介していただいて。掛谷さんとお話しさせていただくようになったのは、それからです。奥様と2人でここに来てくださって、うれしかったですね」(澤さん)

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シングルモルトを中心としたウイスキーをはじめ、幅広いアイテムを揃える。「ウイスキーを楽しまれる方と、あとカクテルも多いですね。スタンダードなカクテルはもちろん、旬のフルーツを使ったカクテルを目当てに来られる方も非常に多いです」(澤さん)

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フードの充実ぶりもこの店の魅力の一つ。料理専門のスタッフがおり、チーズや生ハムなどの前菜からハンバーグ、カレーといったメニューまで揃える。「昔ながらの喫茶店の洋食を思い出すような味作りにしています。お酒と一緒に食べていただくものなので、味はしっかりめ。食前酒、お食事とお酒、食後のお酒と、どの時間帯に来ていただいても楽しめるような店づくりを目指しています」(澤さん)。人気はおつまみやサラダ、フィッシュアンドチップスなど。ここで遅い夕食をとる飲食店関係者も多いそうだ。

掛谷さんが今回いろいろ頼んだ中で「たまらんおいしかった」と絶賛するメニューの一つが、ブランデーやマディラ酒に漬けた自家製の鶏のレバーパテ。洋酒が香るパテは、なめらかでクリーミーな味わいに胡椒が利いて、お酒がすすむ。「僕も休日、たまに自分の店に来る時はよく頼みます。こういうくせのないレバーパテには、黄金色をした白ワインや、ちょっと甘さのある貴腐ワインなども合います」(澤さん)

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もう一つのおすすめ、人気のヴェスビオのアラビアータ。フレッシュトマトやベーコン入りの辛いソースがあとを引くおいしさ。ソースがショートパスタに絡んで食べやすいのもいい。「2、3人で来られる場合、会話とお酒を楽しみながらになるので、フォークに刺しておつまみのようにして食べていただけるようにしています」と、澤さん。料理を出す際も、何か一言添えることを心掛けている。「バー空間というのは非日常を求めてきていただいているので、おいしいと思っていただけるように努力することが大事。居心地のよさって、やはりこういう細かいことが一つずつ積み重なって、『あそこで飲んで楽しかったな』ということにつながると思うんです」。料理もお酒もおいしいのは当たり前、あとはいかに居心地良く過ごしてもらうかが大切だと澤さんは言う。

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これまで優秀なバーテンダーを輩出してきた「K6」だが、その哲学というのは、どういうところにあるのだろう。澤さんは、この店で働くうえで一番大事なのは、人が好きかどうか、次に細かいことにまで気が付けるかどうかだという。「たとえばジントニックを作る時なら、天候やライムの状態、ジンの温度など、100のチェック項目を作るんです。それがクリアできて初めて、お客様の灰皿がいっぱいになっていることや、お客様にお水を出すタイミングなどが察知できる。お客様が何を求めているかを察知できるバーテンダーになってほしいと思います」。澤さん自身、先輩から店のジントニックを受け継いでいくために、試行錯誤を繰り返すうち、お酒以外のことにも気付けるようになったという。

お客の細かな表情などから、何を求められているか察知する。掛谷さんのイメージ通りのお酒を作ることも、一流のバーテンダーのそうした心配りが可能にするものなのだ。

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「K6」で受け継がれるジントニック。「ジントニックはその店の名刺代わりになるものなので、これだけはうちのバーテンダーの共通の味にしています」(澤さん)

いつ訪れても心地よい時間を過ごさせてくれるこの店の哲学が、この一杯に詰まっている。

撮影 エディオオムラ  文 山本真由美

■Bar K6

京都市中京区木屋町二条東入る ヴァルズビル2F
075-255-5009
18:00~27:00(金土~29:00)
無休(8月に1日休業日あり)
http://www.ksix.jp/

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