BLOG料理人がオフに通う店2019.09.22

「LURRA°」―「富小路やま岸」山岸隆博さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「富小路やま岸」の主人、山岸隆博さんが通う「LUURA°(ルーラ)」です。

「富小路やま岸」山岸隆博さん

《プロフィール》
京都市出身。「七栄鮨」、中央市場の鮪問屋、ホテルの和食店などを経て、「京都一の傳」で10年間修業した後、201510月に独立し、「富小路 やま岸」を開く。茶道裏千家講師、華道嵯峨御流華範、書道準五段、京都検定取得。20198月には姉妹店「二条やま岸」をオープンし、さらに9月「富小路やま岸 香港店」をオープンする予定。

まるで世界を旅するように。薪火を使った独創的な料理に笑顔が広がる食空間

20190822-23.jpg

「京町家を改築したレストラン。ガラス張りのお店の中に入ると、ガスが無く、ピザ窯と薪焼きだけのキッチンをカウンターが囲むしつらえ。そこに外国人のシェフ。ここから一体どんなお料理が出てくるのだろうと、否が応でも期待が膨らみます」(山岸さん)

20190822-36.jpg

この7月に東山三条に開業した「LURRA°」は、今、京都で最も注目を集めるレストランだ。米国人シェフのジェイカブ・キアーさん、GMの宮下拓己さん、ミクソロジストの堺部雄介さんの、いずれも海外の有名店で経験を積んだ3人が、ニュージーランドの「Clooney」で同僚として出会い、意気投合。築150年以上の京都の古民家を舞台に、レストランプロジェクトを立ち上げた。宮下さんは、「京都は自然に近い場所にあるのがいいし、伝統工芸の街でもある。日本でやるなら京都が一番やりたいことができるなと」と、京都を選んだ理由を語る。

20190822-52.jpg

この店のことはオープン前から「面白い店になる」と注目していたという山岸さん。対する宮下さんも、山岸さんから店作りへのインスピレーションをもらったと振り返る。「『やま岸』さんに行かせていただいたときに、すごく楽しいお店だなという印象があって。お客さんが皆笑顔になれるお店っていいなと思っていたんです」

20190822-59.jpg

ここでは、大原や伏見などの農家から仕入れる京都の野菜や、水揚げ当日の昼に届く魚介など、日本の旬の素材を使い、2種類の薪の火を駆使して調理したオリジナリティあふれる料理を、ドリンクペアリング付きの5品を含む全10品のコースで提供。コペンハーゲンの「Noma」などで培った技術に、日米のエッセンスも交えたキアーシェフの料理は、発酵や塩漬け、燻製などの手法も用いながら、素材の新たな魅力を引き出している。

20190822-12.jpg

キルン(窯)と野菜用のピザ窯がある厨房は完全なオープンで、L字のカウンター席から活気ある調理の様子を眺めたり、窯から漂う薪火の香りを楽しんだりしながら食事ができる。厨房の床はお客の目線と合うよう低くなっており、お客とスタッフの距離も近く感じられる。そんな雰囲気に、山岸さんも「初めてお会いする隣の席の方とも、おいしいですね!面白いですね、この組み合わせ!と話が弾んでしまった」そうだ。

20190822-26.jpg

「うちの料理は特に決まったジャンルはなく、だしや醤油も使えば、インドのスパイスも使います。料理で旅をするような感じを楽しんでいただければ」と、宮下さん。たとえば、山岸さんおすすめの「賀茂茄子、シトラスヨーグルトとコリアンダー」。二度焼きして水分をとじこめた賀茂茄子に、インドのスパイス「バドバン」を混ぜたバターを塗り、ヨーグルト、コリアンダーペーストなどを添えた、香りと楽しむエスニックな味わいの一品だ。

「京都人が考えつかない茄子をヨーグルトで食べるという発想に驚き、食べてみたら相性が良いことに更に驚きました」(山岸さん)

20190822-29.jpg

コースの内容はその時々の食材によって変わるが、唯一定番となっているのが、山岸さんも「おいしかった」と評する締めの「焼きおにぎり茶漬け」。軽く炙って薪の香りを移したおにぎりに具材、お米のチップス、木の芽の粉末をのせ、鹿児島産の鰹節と鱧の骨の燻製でとっただしをかけていただく。具材は燻製穴子の佃煮など、時季により異なる。漆器は輪島塗の老舗の8代目に依頼したもの。器やカトラリーは若手作家のものを中心に、国産の品を使用している。

20190822-16.jpg

また、この店を語るうえで欠かせないのが山岸さんも絶賛するドリンクペアリング。

「ここの魅力は料理もさることながら、ノンアルコールペアリングの秀逸さ。どれも本当においしくて大満足。ワインペアリング以上に考え尽くされている印象を受けました」

クラフトビールや発酵ベリーのジュースなど、ノンアルコールは料理に合わせたものを自分たちで作る。

「フードに寄り添うような飲み物を、コース全体のバランスを考えながら用意します。フードとのバッティングが起きないよう、酒精を低くし、香り成分や余韻などで合わせています。僕らが時間をかけたものに対して評価していただけるのは、うれしいですね」と、ペアリングを担当する堺部さん。

20190822-27.jpg

賀茂茄子の料理に合わせたドリンクは、液体窒素で急速冷凍した2種類のミントと日本ハッカ、抹茶を潰したものを柚子の発酵ジュースに混ぜ合わせ、香りと苦味にはコリアンダーやゼラニウム、仕上げにジュニパーベリーの蒸留水を少し。焼きおにぎり茶漬けには、水出しの京煎り番茶をスターアニスと漬けこんだものを合わせる。

20190822-33.jpg

食事が終わると、全員で「囲炉裏」と呼ばれるテーブルへ移り、談笑しながらデザートを楽しむ。

「デザートに合わせたお飲み物も、味を引き立てていてたまらなくおいしい!デザートがここまでおいしいとまた来たくなってしまいます」(山岸さん)

写真は「焦がしジャージーミルクとルバーブ」。香ばしいミルクアイスにルバーブの酸味と甘みを合わせた優しい味わいで、美味。

20190822-58.jpg

「家にゲストを招待するようなイメージの店にしたかった」との宮下さんの言葉通り、お客もスタッフもフラットになれるアットホームな店の雰囲気は、革新的な料理とともに、食事の時間をより楽しく、印象深いものにしてくれるようだ。

「友人と食事をする際はこの店を選びたい。どこにも無かったスタイルのお店だから話が盛り上がること間違いなしです」(山岸さん)

※料金は2019101日より25,000円(ペアリング付・税サ別)

撮影 瀧本加奈子  文 山本真由美

■LURRA°

京都市東山区石泉院町396
050-3196-1433
17:30~、20:30~(2部制)
※インターネットによる完全予約制 https://lurrakyoto.com/
休日曜、月曜

食知新

Recent