BLOG料理人がオフに通う店2019.10.11

「点邑」―「リストランテ野呂」野呂和美さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「リストランテ野呂」のオーナーシェフ、野呂和美さんが通う「点邑(てんゆう)」です。

「リストランテ野呂」野呂和美さん

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《プロフィール》
青森県出身。東京「山の上ホテル」や「リストランテ・サバティーニ青山」に勤めたのち、「ロカンダ・ヴェッキア・パヴィア」をはじめ、イタリア各地のレストランで修業。帰国後、ホテルグランヴィア京都のレストラン「ラ・リサータ」でシェフとして活躍。その後「洋食おがた」勤務を経て、2017年6月に「リストランテ野呂」をオープンさせた。

確かな技術と経験で四季折々の素材を活かしきる、珠玉の天ぷらと京料理

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大の天ぷら好きという野呂さんが「天下一品」と称賛するのが、今回おすすめとして挙げた「点邑」だ。京都を代表するし老舗旅館「俵屋」がプロデュースする天ぷら専門店として知られ、旬の食材を使った京風の天ぷらを、端正な京料理とともに味わえると、高い人気を誇る。元々御幸町通で営んでいたが、4年前に俵屋のすぐ近くに移転。風情ある一軒家の店舗にリニューアルした。

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オープン以来、ここで板長を務めるのが、小林紀之さんだ。小林さんの料理、そして気さくな人柄もこの店の魅力。まだ移転する前の店に初めて訪れたという野呂さんは、小林さんの料理と出合ったときの感動を振り返る。

「京都のホテルに勤めていたときにお伺いしたのですが、ちょうど鱧の季節で鱧が薄造りで出てきたお皿に、まずびっくりして。もちろん天ぷらにもびっくりしたのですが、その包丁技術と味の持っていき方、食材への造詣の深さ、すべてが驚きで思い出としてずっと残っていました」。以来、野呂さんは何度か店を訪れるようになったという。

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時に店を訪れたり、飲みに誘ったりするなど、野呂さんとは普段から親交があるという小林さん。野呂さんの言葉を聞いて、笑いながら、「ちょっと大きく言ってるな(笑)。でも、うれしいですね。イタリアンの人と今まで付き合いはなかったけど、彼はなかなかいい料理人だと思ってつきあっています」と語る。

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「小林さんには、食材のことなどいろいろ教えていただきます。人に対しても懐が深くて、慕っている料理人は多いと思います」と、野呂さん。ここには野呂さんのように、小林さんの料理と人柄に魅かれた料理人たちがよく訪れるという。

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「小林さんの天ぷらはめちゃくちゃ美味いです。その天ぷらに入るまでのお料理もすごくて、何を食べてもおいしい」と、野呂さん。夜のメニューは、1万円の天ぷらコースと、天ぷらに京料理がついた13000円からの懐石天ぷら。特に地元客には、天ぷらと季節の料理、両方が食べられる懐石天ぷらが人気で、夏の鱧、冬のすっぽんなど、季節の料理を楽しみにする人も多いという。昼はコースのほか手頃な天丼や点心も楽しめる。

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韓国産の名残の鱧を使った「鱧と松茸のしゃぶしゃぶ」は、小林さんの卓越した技術を堪能できる一品だ。繊細に美しく骨切りされた鱧の身は、口の中でふわっと広がり、骨の存在を感じさせず、豊かな旨味だけが残る。搾り柚子と鰹節を入れ熟成させた特製ポン酢もその味を引き立てる。俵屋で長年京料理の腕を磨いてきた小林さんだからこそ出せるおいしさだろう。

「同じ食材でも産地や季節などによってポテンシャルは全然違います。その食材をどう扱うかを丹念に研究して、全部理解した上でそれを体現されている。それも自然体でさらっとやられているのがすごいなと思います」(野呂さん)

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そして、天ぷら。綿実油の白締油で揚げた天ぷらは、軽くて胃にもたれないとお客に好評だ。魚介や野菜、生麩、湯葉などを織り交ぜて供される約10品の季節の天ぷらで、最初に登場するのが、野呂さんおすすめの「海老の天ぷら」。薄い衣で海老の甘味がしっかり感じられる。

「海老の甘味を出す火入れ加減と、歯が喜ぶ揚げ加減に心をつかまれます」(野呂さん)

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野呂さんが特に印象に残ったというのが、海苔で包んだ「うにの天ぷら」。
「鼻から抜ける磯の香りなどの余韻がすごくあって、おいしかったですね」(野呂さん)

衣は海苔の下の部分にだけつけて揚げてあり、生のうにと海苔の天ぷらを楽しむ格好だ。ほんのり温かくとろけるようなうにと海苔の風味が相まって、たまらない味わいに。
「少し熱を加えることで味に濃厚さが出ます。これを頼む人は多いですね」と小林さん。

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小林さんは、素材の種類や状態、天候などに応じて、粉のふるい方、卵液の濃度、衣のつけ方、油の温度、時間などをその都度調節しているという。そうした食材への造詣の深さが、やはり小林さんの天ぷらの魅力だと、野呂さんは言う。「本当においしいものを突き詰めておられて、その結果、琴線に触れるような料理、天ぷらができるのだと思います。揚げ方一つひとつが流れるような感じで、もう芸術の域ですね」。

その言葉に、小林さんは「そこまで思ってもらえるとありがたいですね」と返す。

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小林さん流の天ぷらについて問うと、小林さんからは「一言で言うと、その食材の旨味を引き出すための調理法です」との答え。天ぷらは、蒸したり焼いたりいろいろできる調理法で、その特性を利用して理想の味を引き出していくのが、小林さんが考える天ぷら。試行錯誤しながら引き出し方を見つけ、ようやく料理として出せるという。そんな小林さんの研究心からは、しっとり焼きいものような味わいのさつまいもの天ぷらや、とろとろの食感のトマトの天ぷらなど、新たな味が生まれている。

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「正直言うと、まだまだです」と、今なお新しい天ぷらへの追求を続ける小林さん。野呂さんら若手料理人たちからの刺激も受けつつ、誠実にその時々の食材と向き合い続ける姿に、皆、更なるおいしさと出合えることを期待してしまうのだ。

撮影 エディオオムラ  文 山本真由美

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■ 点邑

京都市中京区麩屋町三条上ル
075-212-7778
11:30~13:30(LO)、17:30~21:00(LO)※夜は要予約
休 火曜日

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