BLOG料理人がオフに通う店2020.01.22

「青柳」―「隆兵そば」中村隆兵さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「隆兵そば」の店主、中村隆兵さんが通う「青柳(あおやぎ)」です。

「隆兵そば」中村隆兵さん

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《プロフィール》
京都市出身。昭和51年、京菓子の「中村軒」4代目の次男として生まれる。大学卒業後、東京で4年ほど料理の修業をした後、小浜の禅寺に行き原田老師に師事。その後、丹波篠山の「ろあん松田」の大将と出会い、蕎麦作りを学ぶ。平成16年に「隆兵そば」を開業。良質の地下水を用いて仕立てる蕎麦と川魚料理のコースが人気を集めている。

これまでにない魚のおいしさと出合う幸せを、おまかせコースで心ゆくまで

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「いろいろな料理屋さんでおいしい魚を食べますけど、ここの魚料理は群を抜いていておいしいです。お値段もそれなりにしますが、その値打ちは十分あります」

そう中村さんが絶賛するのが、知恩院に程近い東山を望む白川沿いに立つ「青柳」だ。完全予約制の魚料理専門店で、店主の青柳旭紘(あきひろ)さんが、旬の魚の持ち味を存分に引き出した料理を提供。ここに来ればおいしい魚が食べられると、舌の肥えた人々が通う。

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店内は、カウンター6席のシンプルな空間。メニューはおまかせコースのみで、一斉に食事を始めるスタイルをとっている。

「以前は違う場所で営業されていて、今年3月に移転されたんです。最初に行ったのは1年前になるのかな。仲良くしている魚屋さんが青柳さんに魚を卸していて。すごくいい魚を入れている店があるから、と誘われて一緒に行きました。青柳さんは歳が一つ下で、僕の大学時代の後輩と同級生ということもあって親しくなり、通うようになりました。まだ新しいお店には行けていませんが、近々行っていろいろ話したいなと思っています」(中村さん)

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中村さんのことは以前から同級生から聞いていたという青柳さん。知り合ってから中村さんの店へ行くこともあり、いろいろ刺激を受けているという。

「隆兵さんを見ていると、まだまだ僕もやらなあかんことがあるな、止まってられへんなと思います。だから隆兵さんがうちに来られるときは緊張しますね(笑)」

青柳さんはさまざまなジャンルの料理を経験した後、12年前に独立。魚料理専門にしたのは、時季や産地など、条件によって変わる魚を扱うことに面白さを感じ、魚料理を極めようと思い至ったからだという。

「魚には旬があるし、また鮮度が命のものもあれば、熟成でおいしくなるものもある。天候にも左右されて、常に同じ質のものが入るとは限らない。そういう意味で難しいけれど、やっていて面白いし、おいしい魚に当たるとうれしくなります。お客さんにもこういうおいしい魚を味わってもらえたら、幸せだなと思って」

そこから魚屋とのいい出会いもあり、試行錯誤を重ねながら、魚に関するさまざまな知識や経験を深めていったという青柳さん。熟成の技術も、熟成が注目される前から取り入れてきたことだ。

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1415種類の魚介が使われるコースは、造りや焼き物をはじめ、旬の魚介を主体に、季節野菜を盛り込んだ全7品で構成され、最後ににぎりなどの寿司が登場する。

「隆兵さんが蕎麦を追求して川魚しか使わないのと一緒で、うちも魚を引き立たせるため以外、肉は使いません。魚をもっとおいしく食べてもらえるよう、最近は野菜と合わせたり、日本酒やワインと合わせたりもしています」(青柳さん)

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「素材の持つ個性を表現するのが僕の仕事」という青柳さん。その時々で内容が変わるコースは、魚の個性を見極めた青柳さんならではの工夫が光る。

「例えばお造りでもそのまま出すときもあれば、野菜と和えたりするときもあるし、焼き物も白みそを合わせたりと、その魚に合った出し方をされていて、魚への深い愛を感じます。それも余計なことはしていなくて、新しいんだけど落ち着いてみえる。これは意外と難しくて、魚のことをよほど考えていないとできないと思います」(中村さん)

写真はおすすめのお造りの一例で、フグの皮や身などのいろいろな部位と、クレソン、ラディッシュなどの野菜、油揚げなどを、ごま酢であっさり味付けた「フグのサラダ仕立て」。フグの食感と旨味を野菜のシャキシャキ感とともに堪能できる年明けの定番メニューだ。

「フグって噛めば噛むほど味が出てくるので、最初に野菜でインパクトを与えて、最終的にフグの旨味を感じてもらうようにしています」(青柳さん)

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焼き物も中村さんおすすめの品。写真は「キンキの炭火焼 田楽味噌」。脂がのったキンキは、皮の香ばしさ、やわらかな身の芳醇な味わいが白みそとマッチして実に美味。

「クリーミーな身質のキンキと白みそが意外と合っていて、脂を中和させてくれます」(青柳さん)

中村さんは、青柳さんのことを魚料理の芸術家のようだと話す。その言葉に、

「いやいや、僕なんかまだまだです(笑)。隆兵さんのように個性があって、すごい考え方を持っておられる方がたくさんいらっしゃるので、そういう考え方を新しい料理につなげていけたら」と、青柳さん。刺激を受けつつ、柔軟に、更なるおいしさを追求していく。

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「日本酒やワインもいろんな種類があり、料理に合わせてお酒を選んでもらえます」と、中村さん。日本酒は大吟醸のみを扱い、常時10種類ほどが揃う。

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また、器もここでの楽しみの一つ。

「器も本当にいいものを持っておられて、そういうところにも感動します」(中村さん)

ガラスはラリックやバカラなどのアンティーク、陶磁器や漆器などは現代作家のものを使用。酒器も酒の量や味わいなどに合わせて、青柳さんがセレクト。器も酒も魚をおいしく食べてもらうための大切な要素だ。

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店内からは東山の景色を楽しめる。

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「一人で料理を作っているため完璧な接客はできませんが、その分おいしい料理をしっかり出す、お客さんにストレスなく過ごしてもらう、ということは大事にしています」と、青柳さん。

予算は酒代を入れて3万円程度。渾身の魚料理やそれを引き立てる美酒とともに過ごすひとときを満喫したい。

■青柳

京都市東山区古門前通大和大路東入4丁目石橋町306-7
18時~19時30分(入店)※完全予約制(予約はHPから)
休 不定休
http://kyoto-aoyagi.jp/

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