BLOG料理人がオフに通う店2020.01.27

「にし野」―「隆兵そば」中村隆兵さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「隆兵そば」の店主、中村隆兵さんが通う焼鳥専門店「にし野」です。

「隆兵そば」中村隆兵さん

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《プロフィール》
京都市出身。昭和51年、京菓子の「中村軒」4代目の次男として生まれる。大学卒業後、東京で4年ほど料理の修業をした後、小浜の禅寺に行き原田老師に師事。その後、丹波篠山の「ろあん松田」の大将と出会い、蕎麦作りを学ぶ。平成16年に「隆兵そば」を開業。良質の地下水を用いて仕立てる蕎麦と川魚料理のコースが人気を集めている。

店主入魂の焼鳥を味わい尽くす充実のおまかせコースを、豊富な燗酒とともに

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阪急西院駅近くの住宅街に、おいしい焼鳥をコースで食べさせる「にし野」がある。2014年にオープン。中心部から離れた場所にありながら、今や全国からファンが訪れる人気店だ。

中村さんとこの店の出会いは数年前だという。

「仲のいい杜氏さんと一緒に行ったんですけど、ご主人の西野さんと同い年で、しかも誕生日まで同じだとわかり、盛り上がりました。コースで出されるのが珍しいしおいしかったので、それから通っています」と、中村さん。

対する店主の西野顕人さんも、

「隆兵さんは職人さんとご一緒に来ていただくことが多いです。同い年ですけど、料理人としては先輩だし、学ぶことだらけです。とにかくぶれないすごい人。とても尊敬しています」と語る。

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店舗は新聞販売所の建物を改装。厨房を囲むようにカウンターが設けられている。

メニューは70008000円のコースのみで、決まった時間に一斉に始めるスタイルだ。

「店のわがままになるのかもしれませんが、コースにして鶏を一羽丸ごと毎日使い切るほうが、いい鶏を仕入れることができるし、新鮮なものを新鮮なうちに使えるので」と、西野さんは説明する。現在は、目利きの業者から京都の丹波黒鶏と和歌山御坊の宮子姫地鶏を仕入れ、部位により使い分けている。

「仕事に対してすごく真摯で、真剣にやられているところが気に入ってます。焼く技術が尋常じゃないというか、ピンポイントで狙って焼くのがすごい」(中村さん)

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中村さんが「焼きのスペシャリスト」と絶賛する西野さんは、東京の焼鳥店で約10年間修業した後、地元の京都に戻って独立。開業までの1年間、勉強のために鶏肉業者で働いていたそうだが、そのことからも焼鳥に対する熱意が窺える。

「京都で扱われている鶏のことを勉強したいと思って、中央卸売市場の鶏屋さんで鶏を解体する仕事をやらせてもらうことにしたんです。その仕事の傍ら、物件探しをしていました。その仕事が楽しくて、3カ月の予定が結局1年働いていました」と、西野さん。

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炭は土佐の備長炭。特に良質の炭を作る生産者から仕入れている。

「生産者さんの窯にも何度か行って、いろいろ教えてもらっています」(西野さん)

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「鶏のいろいろな部位が出てくるんですが、間に野菜をはさみながら、シメに親子丼やおにぎりが出てきたりします。塩でシンプルに食べるものもあれば、ソースを使ってアレンジするものもあって、とにかく飽きさせないですね」(中村さん)

コースの内容はその時々の仕入れで変わり、野菜やスープ、漬物などを入れて15品ほど。焼鳥は手羽先、レバー、もも肉、つくね、鴨肉、ささ身などがお決まりで出されたあと、その他の部位をお客に選んでもらうという流れだ。レバーに赤酢を一塗りして出したり、鶏のたたきに3種をブレンドした酢、塩、柑橘を合わせたりと、さまざまな趣向でお客を楽しませる。

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中村さんのお気に入りは、「手羽先」。

「皮がパリッとしてジャストの焦げ目がついているし、焼きのレベルが全然違う。手羽先って普通の焼鳥より形がいびつなんですが、どの角度から見ても焼きが完璧で、すごく感動しました」(中村さん)

「うれしいですね。隆兵さんもシンプルな料理をされてるので、そういう点で料理について感じている部分は近い気がします」(西野さん)

絶妙に火入れされた手羽先は、脂に対する塩加減も抜群で、実においしい。

「焼鳥って、脂に対する塩のバランスだけなので。脂の甘さを焼き加減でコントロールするのが焼鳥やと思っています」と西野さん。

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中村さんのおすすめは、高知産を使った「鴨肉」。

「シンプルだけど深さが堪能できる手羽先に対して、鴨肉は焼いてから休ませたり、ソースや果物を添えたりされている。焼き加減も絶妙で、季節ごとに違う食べ方ができておすすめです」(中村さん)

塊で焼いて旨味を閉じ込めた鴨肉に、赤酢を煮詰めたソースと焼いた巨峰を添えて。口の中でやわらかい鴨肉がソースや巨峰の甘味と混じりあい、実に濃厚で豊かな味わいに。

「ブドウと合わせて味が成立するよう鴨の塩は控えめにしています。果物と合わせることによってまた違った鴨の魅力が出ると思っています」(西野さん)

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ここでは日本酒やワインなどの酒類も充実。特に力を入れているのが燗酒だ。広島の「竹鶴」を中心に18銘柄ほどを豊富にそろえる。

「僕は昔ながらの作り方をしているお酒が好きで。焼鳥を食べるときに燗酒を飲むと、口内で脂の味が化学変化を起こして、焼鳥の余韻が続くような感じになる。そこはお燗ならではかなと思います」と、西野さん。

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「カウンターで話しながら食べられるのが何よりのサービスですし、奥さんもよう気が付かれる方で、気持ちがいいお店」と、中村さん。

一緒に店を切り盛りする妻の和佳さんのサポートも欠かせない。

「営業中はずっと焼いているので、お客さんへの対応は大体嫁さんがしてくれます。作業が落ち着くとお話しできるんですが、そのときお客さんが話したいことがあるかという問題もあります」と西野さんは笑う。

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「まだまだ勉強することがあります」と、中村さんと同様、ストイックに料理に打ち込む西野さん。どの作業が楽しいかという問いに、こう答えた。

「焼くことはもちろん楽しいですが、仕込みをして料理がお客さんに届いて、お客さんがおいしそうに頷いている姿を見るのがうれしいし、一番楽しいですね」

■にし野

京都市右京区西院北矢掛町36-16
075-322-3184
平日19時~ 土曜18時~・20時30分~の2部制 ※完全予約制
休 水、日、祝日
https://nishino-kyoto.com/

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