BLOG料理人がオフに通う店2020.02.12

「酒陶 桺野」―「にし野」西野顕人さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「にし野」の店主、西野顕人さんが通う「酒陶 桺野(やなぎの)」です。

「にし野」西野顕人さん

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《プロフィール》

京都市出身。東京で焼き鳥に魅了され、東京、横浜と8年間修業。2013年、独立のため京都に戻り、京都市中央卸売市場の鶏肉卸の加工場で働きながら、肉の解体や目利きを学ぶ。2014年に焼き鳥専門店「にし野」をオープン。趣向を凝らした焼き鳥のコースが評判を呼んでいる。

オーナーの美学が詰まった一杯を旨い酒肴と。究極のシンプルが心地良い隠れ家的バー

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店選びはまず人ありきで、大好きな人の仕事に触れに行く感じだという西野さん。今回お勧めの「酒陶 桺野」も、そんな一軒だ。

烏丸三条交差点から三条通を西へ。壁の看板がなければ見過ごしそうなこの店は、京都のバー好きなら誰もが知る人気店。店主の柳野浩成さんが出す一杯を求め、さまざまな層が足を運ぶ。_EDY1176.JPG

「土壁にレンガを使った内装、器も、美しくてカッコいい。お酒と一緒に料理も楽しめるんですが、魚も野菜も季節のものがちゃんとあることに驚きます」(西野さん)

店は22年前に開業。2008年に今の場所に移転した。

レンガの壁が続く入口から中に入ると、土壁と一輪挿しが茶室を思わせる長いカウンター、その奥には庭を望むテーブル席が。自然の素材の風合いを生かし、余計な装飾を削ぎ落とした空間が広がる。

「大勢のときはテーブルを利用しますが、カウンターに座ることが多いですね。普通、カウンターの後ろにボトルが並んでいて、照明に照らされているというのがバーの醍醐味としてあると思うんですけど、それとまったく逆で。お酒のボトルもグラスも一つも見せず、カクテルを作る手元だけが見えている。その表現の仕方もすごいなと思います」(西野さん)

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バーなのに和食を味わえるのも魅力。かつお、ぐじなどの魚に、蕪蒸し、菊菜ひたしなど、その時々の食材を使った一品が品書きに並ぶ。中でも魚料理のおいしさは出色だ。

「アテに魚が、それも尋常じゃなく質、状態、鮮度のいいお造りが出てきます。何かいただくときは旬の魚をお願いします」(西野さん)

写真はいかのてっぱい900円(税込・以下同)。

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菜の花やくわいなどを盛った季節の八寸900円。

「京都で昔から当たり前に使われていた旬のお魚や野菜の定番料理を出す店が減って、普通に食べられなくなってきている。だから、うちはお酒のアテとしてそういうオーソドックスできっちりとした料理を出せたらいいなと思っています」と、柳野さん。しっかり食事をしたいなら、コースを予約することも可能だ。

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カクテルやウィスキーなどの定番に加え、少数精鋭のワインも定評がある。

「かんぱちに赤ワインなどを合わせて楽しませてくれるのも、柳野さん流で面白いです」(西野さん)

「本当においしいワインって懐が深いし、広い。おいしい魚とおいしい酒なんて、そうそう喧嘩しないはずで。だから好きなん食べて好きなん飲んでくださいと、いつも言ってるんです」(柳野さん)

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西野さんとこの店との出合いは、ここで開かれたワインの勉強会だったという。

「取引している酒屋さんが柳野さんと同じで、23年前にその方に連れて行っていただいたんです。数本のワインを開けて、それぞれどういう状態か、姿かたちを皆で感じて、意見し合う会でした。一般的なワイン会と違って、ブドウの品種や土壌の話題は出てこず、感じてどうするかという話をしたんです。『これは明るいワインやな』とか『もっといいはず』『コルクおかしいなあ』というふうに、教科書に書いてあるような、難しい単語は出てこない。でも、ワインをものとして見るだけじゃなく、こういう感じ方もあるんだと、不思議と腑に落ちたんです」と西野さん。勉強会に2度ほど参加したあと、お客として店を訪れたそうだ。

ちなみに、この勉強会はワインのサービス向上を趣旨として同業者限定で行っているものだと柳野さんは言う。

「お客さんにいかにワインを一番おいしい状態で楽しんでもらうかを考える勉強会。おいしいワインでも瓶差がすごくあるし、グラスの形状や飲み方ひとつで味が左右されるので、提供する側はそれをもっと知ろうと。同じワインでも日によって違うので、どんどん飲んでいって意見を出し合う。それを西野くんは面白がってくれたんでしょうね」

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西野さんは、やはりこの店のシンプルさに惹かれるという。

「すごくシンプルなんですけど、それは膨大な知識や経験から出てきているものだという感じがします」

その言葉に

「そこに気づいてくれているならうれしいですね。例えばジントニックでも、普通の優しいジントニックやった、で終わっちゃうこともあるかもしれない」と柳野さん。

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「おいしいものを出そうというものすごい情熱が、ワインをグラスに注ぐ所作一つとっても伝わってくる。同じワインを、よりおいしくさせる技術はすごいと思います」(西野さん)

柳野さんは、ワインはグラスの底を叩いて振動を与え、香りを確認してから出すという。

「ワインのおいしさのスイートスポットはとても狭いので、それに合わせるために、こうして温度を12度上げたりしています。それで準備ができたら、お出しする。本来サービスとしてはしないことですが、そのワイン本来の姿に一番近づけることが僕たちの仕事なので」

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グラスワイン1000円~、カクテル1000円~。

写真は、昔から常連客に人気のジンリッキー。店のシンプルさを象徴する一杯。

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西野さんら常連から「本当においしい酒を出してもらえる」と絶大な支持を集める柳野さん。最後に、もてなしで大事にしていることを伺った。

「よく言っているのは、お客さんが何を期待して来ているのかを察知しなさいということ。皆求めていることがバラバラなので、できるだけ早く判断する。そこがバーテンダーにとって一番大切なことだと思っています」

■酒陶 桺野

京都市中京区三条通新町西入
075-253-4310
18時~翌2時 ※食事のコースは前日までに要予約
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