BLOG料理人がオフに通う店2020.04.15

「IL GECO」―「Vena」早川大樹さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「Vena」のシェフ、店主、早川大樹さんが通うイタリア料理&ワイン「IL GECO」です。

イタリア料理「Vena」シェフ早川大樹(ハヤカワ ヒロキ)さん

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《プロフィール》
1982年、京都府生まれ。イタリアンの名店「イル・ギオットーネ」で修業を積み、2016年、ソムリエの池本洋司さんとともに「Vena」を開業。これまで積み上げてきた経験をベースに、丁寧に食材を選び、旬を瑞々しく感じさせる料理で多くのファンの心と舌を掴んでいる。

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 四条西洞院下ルにある静かなビルの地下一階。そこに「イタリア料理&ワインIL GECO」がある。オーナーシェフの矢守保則さんは、京都の「サンタ・マリア・ノヴェッラ」をはじめ、京都、大阪のイタリアンレストランで修業を積んだ。7年前に独立し、自分の店をオープンさせた。

「奇をてらわず、普通の料理が当たり前に美味しいという店を目指しました」という矢守さん。アラカルトが主体で、ワインはすべてイタリアのものを揃えている。サービスを担当する妻の寛美さんと二人で店を切り盛りしている。

「僕がVenaを開店した頃から伺うようになりました。定休日前日の、仕事終わりに訪ねることが多いですね。うちの店は、王道のイタリアンというよりは、創作イタリアンにシフトしているので、本場の味に近いものを出しておられる矢守シェフの料理をよく食べたくなるんです。矢守さんは、よくイタリアに行かれていて、たとえばシチリアやヴェネト、ローマなどの現地の料理を視察、体験して、それをリアルに活かした料理を出してくれるので、とても勉強になりますし、刺激を受けています」(早川さん)

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「そうですね。ほぼ毎年、一度のペースでイタリアに料理の研修に行きます。あちこちの都市を巡るのではなく、ある一定に地域に滞在して、まず、その土地の郷土料理を食べる。何軒もの店を回って、同じメニューを味わって、その料理の郷土色や風土が育てた味の原点を感じ取るようにしています。でも

帰ってからが大変で...。毎回、研修結果報告の料理アルバムを作成すること、研修記念の特別メニューに取り組むことを自分に課しているので(笑)。でもお客さんも楽しみにしてくださるので、それは続けているんです。その特別メニューの中から、評判の良かった人気料理をグランドメニューにすることもあります」(矢守さん)

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モチモチとした食感が食欲をそそる「クルルジョネス」600

 メニューは大きくアンティパスト、プリモピアット、セコンドピアットに分かれている。深夜2時頃までオープンしているので、早川さんのような同業者のプロの料理関係の人もよく立ち寄るそうだ。

「僕はまずビールを飲んで、そのあとはワインを1本、ゆっくり飲みます。最初に前菜をアラカルトで頼んだり、盛り合わせにしたり。その後は、おまかせでその時期のパスタをいただきます。仕事が終わってからなので、大抵夜中の12時ぐらいから行って、閉店までいる感じですね」(早川さん)。

 早川さんも時々食べるのが、矢守さんご自慢の前菜、サルディーニャ島のマンマ直伝の「クルルジョネス」600円。本当はパスタ料理だが、量が多くなってお腹がいっぱいになってしまうので、2個だけ前菜として提供している。

 自家製のパスタでじゃがいも、ペコリーノ、ミントを包んで、茹でて、トマトソースを添えた一皿で、パスタのもちっとした食感、じゃがいもとペコリーノの相性も良く、2個、ペロリと食べてしまう。

「こういう現地の料理を食べながら、材料や作り方について、いろいろ教えてもらって...。料理の話をよくしていますが、本当に勉強になります。新しいメニューを考えている時や、はじめての食材に出会った時など、どんな料理にしたらいいかとか、どんな食材を合わせたらいいかとか、いつも丁寧に答えてもらえるので、助かっています」(早川さん)。

「イタリアは各地に郷土食があって、現地の人も誇りを持ってその料理を大切にしています。京都にいても、肉や魚、野菜などの素材は、ほぼイタリアと同じものが手に入るので、調理法は出来るだけ現地のやり方を踏襲しています。日本独特の季節の素材など、その時に旬の美味しいものが手に入ったときは、それもまたイタリアの地産地消の考えと同じで、素材は日本、調理法はイタリアの技法で料理していきますね」(矢守さん)

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甘酸っぱさが日本人にもなじみやすい、牛レバーのアグロドルチェ 1100円。

 もう一品、人気の前菜がヴェネト州の郷土料理である、牛レバーのアグロドルチェ 1100円。アグロドルチェとは甘酢。酸味をヴィネガーから、甘味を玉ねぎから引き出し、そこにバターをからめてコクのある一品に。新鮮なレバーは臭みを感じさせず、まろやかな味わいは、ついワインを呼んでしまう。マリアージュの楽しさもじっくり堪能したくなる。

「こういった食材の組み合わせ方、出会いの妙、ワインとの相性など、感性豊かで楽しくて、いつもヒントをもらって帰ります」(早川さん)。

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滑川産ホタルイカ濃厚ペーストリングイネ1600

 本日おすすめの季節のパスタは、滑川産ホタルイカ濃厚ペーストリングイネ1600円。ぷりぷりのホタルイカを潰してペースト状にしたものをソースにして、やや平麺のリングイネに合わせた一品。ホタルイカのほろ苦さと香りが、パスタによくからんで、まさに春の香り高き一品に。

「僕は塩をあまりダイレクトに調味に使わないんです。このパスタもホタルイカが持っている塩分とアンチョビの塩味で、味付けしています。そのほうが料理全体が良く馴染んで、さらに美味しくなるように感じるので...」(矢守さん)。

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「早川シェフのように、若手でがんばる人たちと料理の話をするのは、僕自身も刺激を受けるし、相談に乗りながら自分の中でパッとひらめいたり、アイデアが浮かんできり。僕にとっても楽しいひとときになっています」(矢守さん)

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 店名のGECOはヤモリのこと。矢守さんの名前をもじって店名にしている。家を守るようにシェフが立ち働く温かく心地いい空気に包まれて、イタリア各地のワインとともに、郷土の香りが立ち上るような料理を堪能する食時間。京都にいながらにして、まるでイタリア各地を食べ歩いているかのように、気分も高揚してくる。シェフ渾身!の旅の料理アルバムをめくりながら、各地の思い出話に花を咲かせるのもなかなか贅沢だ。

撮影/竹中稔彦  文/郡 麻江

■イタリア料理&ワイン「IL GECO」(イル・ジェーコ)

京都市下京区西洞院通四条下ル妙伝寺町720 光悦ビルB1F
075-371-6477
18:00~2:00ぐらいまで 予約がベター
休 月(不定休あり)