BLOG料理人がオフに通う店2021.07.26

「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」-「H.Splendideアッシュ・スプランディード g旬風庵」井手さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「H.Splendideアッシュ・スプランディード g旬風庵」のオーナーシェフの井手 弘昭さんが通う「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」をご紹介します。

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「H.Splendideアッシュ・スプランディード g旬風庵」オーナーシェフ 井手 弘昭さん

 旧京都ホテルを皮切りに、京都ホテルオークラ、リッツカールトン大阪などの有名ホテルで腕を磨き、2004年に、創作フレンチの店「旬風庵」をオープンした。町屋ブームの先駆けとして、また、和のテイストとフレンチのクロスオーバーを楽しめる店として、一躍人気店に育てた。2007年、一つの原点回帰として純然たるフレンチを目指して、1日限定4室のみ、個室フレンチのレストラン「アッシュス・プランディード」をスタートさせた。現在は、「旬風庵」を洋食店としてリスタートさせ、2店舗を切り盛りしている。「お客様の喜びのために」というモットーで、日々、丁寧な仕事を心がけている。

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家族的な雰囲気が温かくて心地よい店内。地元の根強いファンも多い。

 東本願寺の東の真向かいにある心地よい一軒。ここはオーナーシェフの野崎雅也さんと真理子さんが営むビストロだ。野崎さんは、からすま京都ホテルで仕事をスタートさせた。その間に、ホテルと東京銀座のレストラン「KIHACHI」のコラボレート企画に関わるチャンスに恵まれ、1週間、銀座の店で、創業者であり、創作フレンチの第一人者とされる熊谷喜八さんのもとで様々な料理や素材、技法に出会うことができた。「ジャンルレスで常識にとらわれることなく、国境を超えて自在な料理の融合や発想ができることに本当に衝撃を受けました」と当時を振り返る。そのことが契機となり、知らない世界でもっとチャレンジしたいと、ホテルを退職し、新たな道へと進んだ。その時に知り合ったのが井手さんだった。

「井手さんもちょうど、京都ではまだほとんどなかった創作料理への挑戦を始めた頃で...。京野菜など京都らしい素材の活かし方などを、勉強をさせていただきました」。一年ほどで、新しく声がかかり、別の店に移ったが、井手さんとは今も店を行き来するなどの交流を続けている。

「野崎君がいたのは1年余りですが、当店を巣立たったのちは、お互い、一オーナー シェフとして切磋琢磨しながら、刺激を受けています。野崎君の料理は間違いないうえに、奥様の真理子さんの何とも言えぬほんわかしたキャラクターがええ感じで、ついつい通ってしまいます。うちのスタッフを連れて行っても、いつも喜んでもらえます」(井出さん)

 京田辺で店を任されて、創作料理の腕を磨いた野崎さんは、2010年、いよいよ自分の店を持つことに。なかなか良い場所がなく悩んでいた時に、偶然、出会ったのが東本願寺の真向かいという絶好の場所。京都駅にもほど近く、観光客も多い場所で、妻の真理子さん共々、迷うことなくここに決めた。

「しばらく使われていなかったのと、お金もなかったので、二人で毎日通って、DIYでリノベートして、なんとかレストランらしくすることができました(笑)」。若い夫婦のまさに、二人三脚のスタートだった。

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隠し味、利かせ味、王道の味。各国の様々な調味材を駆使して、独自の味わいを追求する。

 井出さんの店や「KIHACHI」で学んだことは、何よりも素材の出会いの面白さだった。ナンプラーやタバスコなど多国籍な素材やスパイスを使って、そこに京都のおいしい野菜と、醤油や味噌など日本人に食べ慣れた味わいを巧みに組み合わせて、独自の味の世界を展開していく。隠し味という言葉だけでは表現しきれない面白さが一皿ひと皿に反映されていて、コースの中にリズムが生まれて、飽きさせることがない。

その技ありのテイストを気軽に楽しめるのが、コースのスタートにふさわしい「旬の彩り前菜5種盛り合わせ」だ。

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和洋中、アジアンなど多彩な味わいが一皿にぎゅっと盛り込まれている。人気の夜の「びすとろコース」3850円から抜粋。

 前菜5種は左から、黒豚の田舎風パテと自家製ピクルス、セセリのタイカレー煮込み モッツアレラチーズ焼き、野菜と魚介の春巻きスイートチリとサルサソース添え、鱧のバプール、 真鯛のカルパッチョ 上賀茂の柴漬けソース。魚介、肉、野菜のバランスが素晴らしく、チリソース、サルサソース、柚胡椒、グリーンカレーなど、多国籍な味わいとともに楽しむことができる。冷えたスパークリングワインがグイグイと進む。

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こんがり皮目を焼いて、絶妙の火入れで仕上げたたっぷりの野菜とともにいただく、ヨコシマフエフキ鯛のポアレ。

 「びすとろコース」では、メインを魚、肉の3品からチョイスする。今日の魚料理はヨコシマフエフキ鯛のポアレ。白味噌と大葉のまろやかなソースと香ばしいバルサミコのソースでいただく。シコシコとした白身と、和ベースのソースの相性がたまらなくいい。添えられた野菜にも注目。カリフラワー、ブロッコリー、アスパラ、モロヘイヤ、ズッキーニ、ニンジン、サツマイモ、ハクサイ菜、ヒメタケなど、超絶アルデンテで、本来の旨味と食感を生き生きと味わえる仕上がりになっている。

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高さのある盛り付けが印象的な鴨肉のロースと賀茂茄子の田楽

 肉料理は、鴨肉の胸ロースと賀茂茄子の田楽。とろりと焼き上げた賀茂茄子の甘やかな味噌味に、鴨肉のロースと、野菜やフォンドヴォーを合わせたシャリアピンソースの濃厚な味わいが一つにぴたりと重なり、まさに、味の出会いの妙を演出している。鴨肉の美しいロゼ色が食欲をそそる。

 いろいろな国のスパイスや独自の調味材を見事に使いこなして、それらの組み合わせやバランスもまたお見事。野菜、魚、肉などメイン素材の味を最大に引き出しつつ、酸味、苦味(にがみ)、甘味、辛味、鹹味(かんみ)、淡味(たんみ)の六味をバラエティ豊かに創造していく。

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「今でもKIHACHIさんの店での1週間の興奮と感動をよく覚えています。人生であれほどの刺激を若いうちに受けることができて幸運だったと思います」

 「お客様を飽きさせないこと。それを最も意識しています。濃い、薄い、インパクトのある味、どこか懐かしい味、スパイシーな味、柔らかな味など、メリハリをつけながら、コース料理を飽きることなく召し上がっていただいて、それらが一つのまとまりとして幸せで深い印象を残すことができれば、嬉しいですね」

 締めには小さなお茶碗のごはん、お漬物、ほうじ茶をお出しする。お客さんはみな、ほっとした顔で喜んでくれるそうだ。
窓からは東本願寺の緑がすぐ目の前に見えて、春の桜、夏の緑を楽しみ、秋には大銀杏が黄金色に輝く。京都の四季を身近に感じたい時は、ぜひ訪れて、目で舌で京の食時間を堪能してほしい。

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京都のワインも揃う。野崎シェフの味わいは、ジャパニーズワインの清らかな味にもよく合う。

■創作料理と京野菜のびすとろKIZANO

京都市下京区卓屋町66-1 ベルセゾン京都駅前1F
075-708-2454
営業時間11:30~15:00(L.O 14:00)、18:00~21:00(最終入店20:00)
※現在は新型コロナに関連して、クローズ時間に変動あり、コース料理のみ。
昼プレートランチ1,540円〜 コース2,530円、夜3,850円〜※全て税込、サなし
月曜定休(その他に不定休あり)※予約がベター

撮影/竹中稔彦  取材・文/ 郡 麻江

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