BLOG料理人がオフに通う店2021.08.27

「季節料理と天ぷらのお店 LovA」-「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」野崎雅也さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」の野崎雅也さんが通う「季節料理と天ぷらのお店 LovA」をご紹介します。

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「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」オーナーシェフ野崎雅也さん

 からすま京都ホテルで仕事をスタート。その間に、ホテルと東京銀座のレストラン「KIHACHI」のコラボレート企画に関わるチャンスに恵まれ、創作フレンチの第一人者とされる熊谷喜八さんのもとで様々な料理や素材、技法に出会う。「ジャンルレスで常識にとらわれることなく、国境を超えて自在な料理の融合や発想ができることに本当に衝撃を受けた」そうで、知らない世界でもっとチャレンジしたいと、ホテルを退職し、新たな道へと進んだ
「H.Splendideアッシュ・スプランディード g旬風庵」やその他の店で腕を磨き、2010年、東本願寺の東の真向かいに「創作料理と京野菜のびすとろKIZANO」をオープンさせた。季節の食材にいろいろな国のスパイスや独自の調味材を使いこなして、素材の味を最大に引き出しつつ、酸味、苦味(にがみ)、甘味、辛味、鹹味(かんみ)、淡味(たんみ)の六味をバラエティ豊かに創造している。

 平等院にも近く、風光明媚な宇治の中心にある宇治橋商店街。若い世代が新しく店を開くなど、元気な商店街としても知られている。その一角に建つ築80年の古民家をリノベートしたのが、「季節料理と天ぷらのお店 LovA」だ。

 「ロバさんにはオープンした時期などもほぼ同じタイミングでオープン当初から行かせてもらってました。夫婦でランチに行くときなどに利用しています。私たちが暮らす宇治では当時はまだ珍しかった古民家を改装したお店で、興味があって行ってみたら、お料理も美味しく雰囲気も良かったので、今では家族ぐるみで仲良くさせて頂いています。ご主人の荻田さんとは、同世代ということもあり、毎回、いろいろな刺激をもらっています。いつ行っても心地よく、知り合いの家に招かれたように落ち着けるところが好きですね。妻とよくランチタイムに伺うのですが、薄味ながらもしっかり手をかけた季節感抜群のランチのプレートがおすすめです」と野崎さん。

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庭の緑を眺めつつ、滋養に満ちた料理をいただく幸せ。リピーターが多いのもうなずける。

 主人の荻田貴之さんは、美術大学の彫刻科を卒業後、さまざまな飲食店で働いてきた。「なかなか彫刻の仕事で食べていけるものではありませんから(笑)、あちこちの店で料理の仕事をするうちに、いろいろな創意工夫ができる料理の世界に面白さを感じるようになったんです」

 飲食の世界でやっていくことを決め、創作料理カフェやダイニングバーなど、さまざまなジャンルの飲食店で経験を積んだ荻田さんは、2009年、縁があってこの地に店を開くことにした。店名は「ロバの歩みのようにゆっくりでも着実に歩んでいけるように」という思いを込めたそうだ。

 店内はどこか懐かしい和のくつろぎに満ちて、坪庭を眺めながら、ゆっくりと過ごすことができる。古いダイニングテーブルや床の間の掛軸がしっくりと馴染んで、いつまでも滞在したくなるような心地よさだ。

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農家さんが丹精込めて作った野菜たち。荻田さんは、最も美味しく食べてほしいと日々、真剣に向き合っている。

 当初から大切にしていたことは、良い食材を使って、無添加、手作りの味を提供するということ。お客さんや知り合いの紹介で、宇治や奈良の農家さんと知り合い、また山城産の新鮮な野菜を扱ううちに、野菜の豊富なバリエーションや季節感、旬の野菜が持つ滋養などに心惹かれ、「とにかく野菜を美味しく食べてほしい」と、今年から天ぷらを主体にした料理構成に一新した。

「野菜を美味しく食べる料理として天ぷらは、最もシンプルで、野菜本来の味わいをそのまま食べていただけるということが大きな理由ですね。それと日本人には食べ慣れた味わいであり、みんなが大好きな御馳走でもありますから」

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天ぷらは手際が大切。温度、時間など見極めて常にベストな揚げ具合を求める。

 ランチタイムにもディナータイムにも人気が高いのが、「LovAの天ぷら膳」だ。 メインの天ぷらは旬の野菜8:魚介2という割合で、8〜9種の揚げたて天ぷらを味わえる。 油は米油100%。衣は天ぷら粉に玄米米粉、卵を用いて、からり軽やかに食感よく揚げる。天つゆは、醤油、砂糖、少量の酢で作った返しに一番だしを合わせたもので、ほんのり甘・旨な味わいで、飽きがこない。お好みで焼塩をつけてもいい。

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からりと薄衣の天ぷらが美しい「LovAの天ぷら膳」。島根の穴子、海老の他は全て、野菜や生麩、海藻を使う。ベジタリアン仕様で全て野菜に変更するのもOK。写真は昼の膳で1650円(税込)。天ぷら、旬のサラダ、小鉢、具沢山の味噌汁、黒米のご飯がついてかなりのお値打ちだ。

 ディナータイムにはおばんざいなど、こちらも野菜をふんだんに使った一品料理が揃う。天ぷらを頼んでおいて、お酒を一品とともにゆっくり味わい、最後に締めで天丼を頼むもよし、京田辺のヒノヒカリの白ごはんと具沢山の味噌汁で終わるもよよし。地元ファンが多いそうだが、全体にゆっくりと時間が流れるようで、初めて行っても親戚の家に来たような寛ぎを感じることができる。

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トマト、なす、じゃがいも、インゲン、コーン、玉ねぎなど野菜をたっぷり使った夏の定番、夏野菜のトマト煮700円。自家製トマトソースに塩、バルサミコ、隠し味にココナツミルクを加えてまろやかさを添える。

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ほろっと柔らかく仕上げた牛ホホ肉の宇治ほうじ茶煮込み1500円。甘辛い味付けにほうじ茶の香ばしさがさっぱりとした後口を添える。重すぎず、香りの良い赤ワインがよく合いそう。ほうじ茶は宇治の利招園茶舗のプレミアムな茶葉を惜しげもなく使う。

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お酒も天ぷらと和食によくあう日本ワインや日本酒などを厳選。「醍醐のしずく」は古式醸造で作られた自然酒。

 妻の真紀子さんは実はパン作りの名手。千葉で、古式醸造で自然酒を作る寺田本家の酒粕で酵母を作り、パンを焼いている。今は子育てに忙しいため、毎週、金曜だけ店の一角で販売しているが、卵や乳製品を使わず、奈良の竹炭塩や国産小麦、沖縄のきび糖など、体に優しい素材を厳選して焼き上げるパンは、地元の若い母親や女性ファンに評判がよく、すぐに売り切れてしまう。

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仲の良い素敵な荻田さん夫妻。二人の人柄が和やかで心地よい店を作っている。

「これからは揚げ方も素材も日々、研鑚、研究して、さまざまな素材を組み合わせて揚げてみたり、うちらしい味わいを探しながら、天ぷらをもっときわめていきたいです」
夫婦で自然体で切り盛りする店には、どこか空気も自然に、ゆるやかに流れていく感じがする。古色ゆかしい空間で季節の恵みを美味しくいただいて、自然に、農家さんに、料理をする人に心から感謝する。
今こそ、こんな幸せな時間を持つことを大切にしていきたい。そんなことをふと思わせる一軒だ。

■「季節料理と天ぷらのお店 LovA」

宇治市宇治壱番83
0774-24-5966
営業時間昼 11:30~14:00 LO、夜 17:30~20:30 LO
休 月曜日 / 火曜日

撮影/竹中稔彦 取材・文/ 郡 麻江

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