BLOG料理人がオフに通う店2022.01.14

「樽八」-「HANA(ハナ)」の岩崎出さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は、「HANA(ハナ)」の岩崎出さんが通う「樽八」をご紹介します。

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推薦者の「HANA(ハナ)」のオーナシェフ、岩崎さん(左)

岩崎出さんは、京都・元田中のフレンチの名店、ベルクールで松井知之シェフのもと、4年半、修業し、その後、2号店となるLe Bouchon(ル ブション 寺町二条)を任され、ここで4年半、研鑽を積んだのち、2000年に独立して、オーナーシェフとして「HANA」をオープンさせた。岩崎さんのような料理人が、深夜、仕事を終えてから集まって、美味しい料理とワインを飲めるような店を、という思いをかたちにして、自身の店をオープンさせた。カクテルやワインが飲めて、ベルクール仕込みのフレンチ・アラカルトが揃う、ビストロの先駆けのような店をオープンさせたところ、評判を呼んで、大人が深夜までゆるりと楽しめる一軒として、多くのファンを掴む店に。今も多くのファンが集まる一軒となっている。

「新鮮な海鮮料理からお肉料理まで、とにかくメニューが豊富で、子供から年配の方まで楽しめる、安くて美味しいお店です。カップル、家族、グループなどいつ行っても、いろいろな方が料理とお酒を楽しんでいます。僕は、結婚前は沢山の友達と通っていましたが、今は家族で行くことがほとんどで、カウンターに座って、店主の昌くんと料理の話をしながらいつも楽しんでいます。妻も娘も大好きなお店なんですよ。寛げる空間やし、料理も美味いし、料理関係の方々も沢山見えているみたいです。僕がいつもオーダーするのは、お造り盛り合わせ、季節の天ぷら、グリーンサラダ、自家製餃子、ノドグロ塩焼きなどなど。特に魚介は本日のおすすめを聞きながら頼んでいます。お酒類も日本酒、焼酎、ワインなんでも揃っていて、財布に優しい値段設定です。僕のお気に入りは、夏は焼酎ソーダ、冬は熱燗ですね。冬場は蟹コースとか、ふぐコースなどのスペシャルコースもありますし、〆の樽八ラーメンも有名ですよ」(岩崎さん)

「ご家族でよく来ていただいています。知り合ったのは僕がまだ料理人の道に入りたてで、 岩崎さんの店には仕事帰りにしょっちゅう行っていました。若い頃からいろいろ相談に乗ってもらってきましたが、今は家族連れでお互いの店を行き来して、また料理の話で盛り上がっています」(平松さん)

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見よ、この立派なカウンター!ここに陣取って、思わず「とりあえずビール!」と言いたくなる。

 百万遍に程近い場所にある「樽八」。一歩、店内に足を踏み入れるとそのスケール感に圧倒され、「ああ、懐かしい」という感覚に包まれる。広い店内の中央にコの字の木のカウンターがでんと座し、その真ん中で、店主の平松昌峯(まさたか)さんがキビキビと料理をしている。小上がりに座敷、石畳、大きな手書きの本日の品書き、座布団...などなど、昭和の良き時代の居酒屋の空気が満ちみちているのだ。
 それもそのはず、平松さんは二代目。初代の父、水賀(みのり)さんが、友禅の染職人から大きく方向変換をして、友禅工房だった建物を改装し、昭和54年、ここに居酒屋を開いたのだ。場所は京大エリア。京大の学生相手の安くて美味い居酒屋として、多くの常連が通い詰めた。
 18歳の時から父の下で働いていた長男の平松さんだが、15〜6年前に、店の方針をリフレッシュし、大人来てゆっくり料理と酒を楽しめる店へと舵を切った。
 「居酒屋はどうしてもスピードが求められますが、僕は料理人が丁寧に手間をかけた料理を大切にお出したいとずっと考えていました」
 食材をさらに吟味して厳選し、レシピも一から見直し、それでいて価格は庶民の財布に優しい設定を心がけた。平松さんの思いはそのまま、店の評判に繋がり、新たな店のかたちが少しずつ、浸透していった。今では京大関係者はもちろん、学生時代にここに通っていた人が社会人になって訪れてくれたり、サラリーマン、カップルやファミリーなど、多くのファンが店に通っている。

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酒好きにはたまらない景色。

 読み切れないほどの豊富なメニューは見ているだけでも楽しくなってくる。その中からおすすめ料理をいくつか紹介してもらった。
 まず、ここに来たら食べて欲しいのが海鮮だ。「HANA(ハナ)」の岩崎さんからの紹介で知己を得た七条の山定商店から日々届く鮮魚を、まずは造りで。今日の黒板には「天然アナゴ刺身」、「白グジ造り」、「寒サワラ造り」「活松葉ガニ」など、今が旬の魚がずらりと書かれている。見ているだけで美味い酒を欲してしまう。

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本日の造り盛り合わせ。金目鯛、マグロ、明石のたこ、アオリイカ、さわら、鯛、カンパチ、天然ヒラメなど旬魚がたっぷりと盛られている。一人前1760円〜。写真は二人前。

 ご自慢は魚介だけではない。野菜料理の多さにも驚くが、シンプルなグリーンサラダは「今日、仕入れた野菜はほぼ全部のせる勢いで(笑)」という平松さんの言葉通り、瑞々しい野菜がぎっしりと盛られている。オニオンとガーリックのすり下ろしをベースにした自家製ドレッシングの旨味が広がって、たっぷり過ぎると思った野菜もすんなり胃におさまってしまう。

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もう、ぎっしりと詰め込まれたカラフルな野菜たち。一皿で何品目もいただけるのが魅力のグリーンサラダ880円。

 見るからにおしゃれな一品は、店の名物の一つ、マグロのネギトロをサラダ仕立てにした一品で、相性の良いマグロとアボガドを自家製のタルタルソースでいただく。ワインにも合う味わいだ。こちらにも野菜がこれでもかというくらい盛られて、見ているだけでテンションが上がってくる。

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姿も美しいアボガドマグロタルタル 935円。キリッと冷えた白ワインに合いそう。

 創業当初から唯一残っているオリジナルメニューもある。なんと鶏の半身をどんと使った、その名も「名物半身揚げ」だ。初代が考案した赤塩と呼ばれる秘伝のスパイスソルトで味付けした鶏をじっくり揚げたボリューム満点の一皿。ここにくればぜひ、試して欲しい、こちらも名物料理の代表格である。

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オリジナルの赤塩をたっぷり振りかけたボリューミーな名物半身揚げ1430円。ここに来たら一度は試して欲しい初代公安の逸品。

 魚介だけでなく、肉料理もおすすめだ。「和牛焼き」のA5サーロインステーキだ。200gほどのボリューミーなステーキを、切り口をロゼ色に焼き上げて醤油ベースの自家製タレ、または塩でいただくのだが、こちらも人気が高い。

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肉汁たっぷり!ジューシーなサーロインの極上の風味を堪能できるA5サーロインステーキ4180円。

 吟味した素材を造り、焼く、煮る、揚げるなど様々なバリエーションで楽しんで、さらに中華そばや、マグロユッケどんぶり、たらこバターごはん、雑炊など〆のメニューも大充実。酒もビール、日本酒、ワイン、焼酎、サワーなど多彩に揃う。
 割烹と居酒屋の楽しみを併せ持ったような店は、懐かしさと寛ぎを感じさせ、いつも活気に溢れて、和やかに"食べて飲む"よろこびに満ちている。

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ガラスケースの中には日々、旬の魚介が並べられる。今日はミルキーな北海道の仙鳳趾(せんぽうし)牡蠣がお目見え。

 「うちに来れば、何かしら美味しい!と思っていただけるお好みの味にきっと出会ってもらえると自負しています。厨房内は僕が信頼できる調理スタッフと二人で対応しているので、料理にどうしても時間がかかってしまう時があるんです。タイミング的にちょっと待っていただくこともあるかもしれませんが、お待ちいただいた分、美味しい料理を提供させていただけると思っています」

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いつもキビキビと笑顔で出迎えてくれる平松さん。今日のおすすめをいろいろと相談してみて欲しい。

 おひとり様から家族連れ、グループまで、どんなシチュエーションにも心地よく応えてくれる一軒。夕暮れになるとぽっと明かりが灯り、一人、また一人と温かな空間へ吸い込まれていく。美味いものを食べて、飲んで、笑って、明日へのエネルギーをしっかりチャージできるこんな場所は、なにものにも変えがたい。

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座敷もどこか懐かしさに満ちて、心からほっと寛げる空間だ。

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温かな明るい色合いの暖簾が出迎えてくれる。

■「樽八」

京都市左京区田中門前町67
075-721-8080
営業時間 17:00〜23:00
定休日 月曜(祝祭日の前日は営業)

撮影/竹中稔彦 取材・文/ 郡 麻江

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