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BLOG京のほっこり菜時記2019.04.01

京のほっこり菜時記 「京たけのこ」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 今回は3月から4月が旬の「京たけのこ」についてお伝えします。

京都には「であいもん」という言葉がある。
同じ時季にでまわる食材、それも相性の良いものを合わせて料理にすること。
相性がいいから、単独で食べるより味わいが際立つ。

たとえば秋なら「茄子とにしん」、冬なら「ぶりと大根」などがそうで、春は「わかたけ」
やわらかくて風味のある「京たけのこ」と渦潮でもまれて引き締まった「鳴門のわかめ」が出合う。3月から4月が旬のこの出合いは、私の中では最強だ!

「京たけのこ」は、れっきとした京野菜である。
品種は、日本で最もポピュラーな「孟宗竹」で、西京区や長岡京市、向日市などが産地。

もう10年以上前だが、あるホテルのシェフに声をかけていただき
西京区塚原のたけのこ農家さんにうかがったことがあった。
「白子」と呼ばれる極上のたけのこを収穫させてもらったのだ。

「白子」は、その名の通り色が白くきめ細やかでやわらかい。
えぐみが少ないから生のままでも食べられる。
独特の風味があるうえ、炊いたり焼いたりするとホクホクしてほんとうに美味しい!

ただし、収穫するのはかなり難しいことを、私はその時身をもって知った。
なぜなら「白子」は土の下にあって、その姿を見ることができないから。

農家の方は、わずかな土のひび割れを見つけて、たけのこ用の鍬を土の中に入れ、
グッ、グッと根を切るようにして掘り出す。
見ていると簡単そうなのだが、実際にはそうはいかなくて...。
たけのこを見つけるのに一苦労、上手く掘り出せなくてえらく汗をかいた。

帰ってすぐに食べるなら、あく抜き(糠を加えて下茹)をする必要もないと教えていただいたので、帰るなり洗ってうすく切り、そのまま口にほうりこんだ。
ふっとふくらむ豊かな香り、サクサクとした噛み心地も爽快。
あの美味しさは、今も忘れられない。

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「若竹煮」のほか、「天ぷら」や「木の芽和え」など美味しい料理は数々ある。
まるごとカンテキの上で焼いて、刷毛で醤油をさっとぬって食べるのもいい。

とにかく、この時季の「京たけのこ」はまさにご馳走だから、
寺町三条の「とり市(春はたけのこ、秋は松茸を専門に扱う青果店)」でたくさん買って
東京の友人に送り、「京都のたけのこは美味しいでしょう~」と自慢している。

和食以外のイタリアンやフレンチ店でも、春にはたけのこメニューが登場する。
パスタやソテー、チーズ焼きなど...
「おっ!こんなところにもたけのこがいる!」と驚かされることもしばしばだ。

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ふらりと飲みにでかけた寺町四条のビストロ「ekaki」でも、そんな料理に出合った。

「たけのこと鰆、春きゃべつの蒸し焼き」
一見、たけのこ感はないが、味わうとたけのこが存在していることをしっかり感じさせてくれる。

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さわらや春キャベツと重ねて焼いても、シャクッとした歯ごたえは損なわれず
白ワインのソースをかけてなお、ふんわりと良い香りがたちあがる。
しっとりした鰆、やわらかな春キャベツともよくあって、ふくよかな味わい。
真似したいけど、こんな手の込んだ料理は、私にはきっと無理。

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ekaki」との出合いは、この店がオープンした2015年。
美味しいもの好きの蕎麦店の店主が、「もうekaki行きました?」と紹介してくれた。

その足ですぐさま訪ねると、店の雰囲気はカジュアルなのに料理もワインも本格派。
気さくでおちゃめなシェフとワイン担当の可愛い山ちゃん(女子)のコンビを一瞬で好きになった。

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以来、4年近く通っているが、いつ行っても目新しいメニューがあって味わったことのない食材の組み合わせを教えてくれる。
ポテトサラダに鱈とミモレット、鱧とイチジク、紋甲イカと桃、焼きナスとあじなど・・・

今はすっかり人気店だが、ふたりのスタンスは変わらない。

「わかたけ」もいいが、今年は春感満載の「であいもん」
「たけのこ&鰆と春キャベツ」を食べに行きたい!

お店外観.jpg

■ ekaki

京都市下京区貞安前之町611-3
075-708-3675
15:00~24:00
不定休

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。