BLOG京のほっこり菜時記2019.09.04

「丹波くり」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 今回は9月から10月に旬を向かえる「丹波くり」をご紹介します。

女性の好きな食べもの! 
江戸時代は「芋、蛸、南瓜」、令和の今は「芋、栗、南瓜」といわれているそうだ。

だが私...、芋も栗も南瓜も嫌いではないが、旬を待ち焦がれてとびつくほど好物ではない。

お月見の頃(今年の十五夜は9月13日らしい)には「小芋の衣被」を料理屋さんで美味しくいただくし、夏の暑さがゆるんだ頃に、「南瓜のスープ」がコースの最初にでたら、なんだかほっとして嬉しくなる。

けれど、圧倒的にこの食材の並びなら、「蛸」が好きだ。

小学校の頃、友だちのお弁当には「タコちゃんウインナー」が入っていたが、私のお弁当箱には「飯だこの炊いたん」が入っていて、みんなに「なにそれ!気持ち悪い~」と言われたものだ。

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あえて言うなら、「栗」はテンションがあがる食材だ。

時代なんだと思うが、実家にいた頃「栗」はとても特別なものだった。「林万昌堂」の甘栗は来客からいただくお土産だったし、栗の甘露煮はお正月に食べるものだった。

だから、母がまれに「栗入りのおこわ」や「栗ご飯」を炊いてくれると、心が躍った。単に茹でたり剥いたりするのが面倒で、母があまり作ってくれなかっただけかもしれない。

とにかく、我が家では、「栗ご飯」はめったに食べられないご馳走だったのだ。ただし、「丹波くり」なんていう上等なものは家ではけっして食べられなかったが・・・

「丹波くり」は和栗の王様といわれ、昔から和菓子などに重用されてきた。出荷の時期は、9月上旬~10月下旬。松茸と並ぶ京都の秋の味である。

丹波地方では、古くから栗づくりが盛んで、平安時代の法令「延喜式」には、宮廷への献上品として「丹波くり」が贈られたことが記されている。当時から高級食材だったのだろう。

「丹波くり」がほかの栗と違うのは、まずはその大きさ。1個40gの大きなものもあって和栗のなかでも最大級。実はしまって甘味が強く、香りも良い。とはいえ、高級食材。家庭で買って料理するのは、稀なことかもしれない。

もし手に入ったなら、茹でたり、焼いたりという簡素な料理で、自然な甘みとほくほく立ち上がる香りを実感してほしい。

ただ、恥ずかしながら私は「丹波くり」を自分で調理した記憶がない。いただくのは、たいてい料理屋さん。くりの甘露煮、焼き栗、鶏肉と栗の炒め物、栗のリゾット、栗おこわなどなど。どんな料理になっても「丹波くり」の美味しさは際立っている。年々、生産数も減っているらしいから、ますます貴重な味になりそうだ。

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「大の栗好き」というほどでもない私が、「これは秋には必ず食べたほうがいい」と感動したのが、「マールブランシュ 京都北山本店」の「モンブラン・オートクチュール」だ。秋になると必ず、その味を思い出す。

もともと「マールブランシュ」といえば「モンブラン」といわれるほどの代表銘菓なのだが、オートクチュールは、その名のとおり、ラム酒を選んでカスタマイズできるうえ、シェフが席に来て目の前で作ってくれるという豪華な一品。

何種類かあるラム酒から好みの味を選ぶと、それをクラッシュした栗に注いで混ぜてくれるのだ。お皿に盛ってひんやりムースグラッセを乗せ、その上からモンブランクリームをたっぷり。

なめらかで芳醇なクリームとラム酒が香る栗を一緒にほおばると、栗の風味に満たされる。どこかの食リポーターではないが、「栗の密集地帯や~」と言いそうになる。ボリューミーなのに、あっという間に完食。こんな洋菓子体験は初めてだった。

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京都へ観光やビジネスで訪れる方には、2019年8月1日にリニューアルオープンした「八条口店」がおすすめだ。

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ここには「モンブラン・オートクチュール」はないが、八条口店限定の「モンブラン・ミルフィユ」を味わえる。さくっとしたパイ生地にラムが香るモンブランクリームが合わさって、なんともいえないふくよかな風味。目の前でクリームをしぼってくれ、ライブ感も味わえる。

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「お濃茶ナイトロブリュー」も、この店限定メニュー。ビールのように専用のサーバーで注がれるお濃茶に、窒素ガスを加えた新感覚のドリンクである。

「家ではゆで栗も面倒!」という私のようなズボラ?な方におすすめしたい「栗」を堪能できる新店だ。

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■ マールブランシュ八条口店

京都市下京区東塩小路釜殿町31-1 京都駅近鉄名店街 みやこみち内
075-661-3808
9:00〜21:00(カフェメニューL.O.20:30)
無休(施設に準じる)

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。

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