BLOG京のほっこり菜時記2020.02.08

「水菜」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 冬に旨味を増す人気の京野菜「水菜」をご紹介します。

水菜は由緒ただしい京の伝統野菜のひとつ。明治から大正にかけて栽培地が拡大し、今では、大阪、滋賀、和歌山など関西だけでなく関東でも栽培されている。

本来は冬の時季に収穫される冬野菜のひとつなのだが、ハウス栽培されるようになり九条ねぎとともに通年食べられる野菜になった。水菜が冬の京野菜だということを、忘れてしまうほどだ。

ただし、より美味しいものを食べたいならやっぱり冬の露地物。冷え込む京都盆地で育つ水菜は旨味が凝縮しているうえ瑞々しい。


水菜は、古くは千筋菜や京菜と呼ばれ、山城など京都南西部で育てられたそうだ。低湿な土地で肥料をことさら用いず、畦に水を貯めて育てたことから水菜と呼ばれるようになった。

水菜という記載が見られるのは1645年に刊行された「毛吹草」で、実際にはもっと以前からつくられていたのだろう。

京野菜には水菜に似た壬生菜もある。葉に切れ込みがあるのが水菜、切れ込みがなくヘラのような形をしているのが壬生菜。こちらは水菜の変種で、そのほとんどは現在も京都南部で栽培されている。

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やわらかいのにシャキシャキとした食感のある水菜は、サラダにして生で食べても、ハリハリ鍋や煮物にしても美味しく味わえる。

冷蔵庫に水菜があれば、ザクザク切ってオリーブオイルと塩で和えたサラダを簡単につくれて便利。冬の間は常備したい野菜のひとつだ。

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写真のサラダは、木屋町三条のイタリアン「京都ネーゼ」製。実はこれも水菜の一種でカラシ水菜というそうだ。京都亀岡で栽培されたものだという。このカラシ水菜以外にも茎が赤い赤水菜もあり、カラフルで美しいことから料理屋でもよく用いられる。

カラシ水菜のサラダは、瑞々しくて独特の風味。ピリッとした辛味とかすかな苦味があり、オリーブオイルとバルサミコというシンプルな味付けで個性が引き出されている。トッピングでお願いしたモッツアレラや生ハムとも相性がよく、思わずおかわりしたくなった。

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ここ「京都ネーゼ」は、店主が見極めて仕入れる食材の味を大切に引き出すイタリアン。

店主の森博史さんはイタリアや東京の名店「アルポルト」などで腕を磨き、その後、調理師学校の講師を経て京都の「サンタ マリアノヴェッラ・ティサネリーア」の料理長を務めた。

私が森さんと出合ったのも、この頃。「サンタ マリアノヴェッラ・ティサネリーア」がオープンしてすぐにうかがったのだ。もちろん、森さんと面識はなかった。

調理をしながらも、森さんはカウンターに座る客に料理の説明をしたり、好みを聞いたりと丁寧な対応をしていらした。きめ細かなサービスをされる方だなあと思った。食後にハーブティーを選ぶと、いくつか茶葉を前に並べて詳しく説明してくださった。

料理はどれも本当に美味しかったが、それ以上に森博史という料理人が放つ「料理が好き、人が好き」というオーラに惹かれた。

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それから15年ほどになるだろうか。「京都ネーゼ」を開かれてからも森さんはちっとも変わらない。店にうかがうと、丁寧に料理や食材について説明してくださったり、お腹具合を聞いて量を加減してくださったり。とにかく客想いで、心地いい。

16席のカウンター全ての客の様子を見て声をかける姿は、ほんとうに自然体で。ここにいることを心から楽しんでいることがよくわかる。

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透けるほどに薄くスライスして口どけるような生ハムや、京都山田農園の濃厚な玉子を使ったカルボナーラなど名物も多い。この店でしか食べられないものがあるから、何度も訪ねたくなる。

先日、お店を訪ねた後、森さんから「お互い健康で、おじいちゃん、おばあちゃんになってもよろしくお願いします」とメッセージが届いた。

望むところです。

いつまでも、美味しいパスタや水菜のサラダ食べさせてください!

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■京都ネーゼ

京都市中京区三条木屋町上る三軒目 三条木屋町ビル3階
075-212-2129
18:00~23:00(L.O.)
休 日曜及び不定休

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。

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