BLOG京のほっこり菜時記2020.04.07

「ほたるいか」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 今回はちょうど今が漁獲シーズンの「ほたるいか」をご紹介します。

ほたるいかといえば富山...と多くの人が思う。

実際に漁獲量は、富山県や兵庫県が多い。だが、日本海側の広い範囲でほたるいかは生息し、京都府丹後近辺でも春季には底曳網で獲れるそうだ。

「ほたる」という名が付いたのは、小さな体の至るところに5001000個もの発光器があって、それがほたるのように青白く光るから。

以前、富山を訪ねた際に日本で唯一の「ほたるいかミュージアム」を見学した(笑)

ちょうどほたるいかの漁獲シーズン(3月末~5月)で、ほたるいかの発光ショーを見ることができたのだが、思った以上にきれいで幻想的。

それでも、やっぱり「美味しそう!」と思って観てしまったのだが。

私たちが食べているほたるいかは、すべて産卵前のメス。産卵するために、深海から浅いところへ移動してきたところを獲るのだという。

目や肌に良いレチノール(ビタミンA)や生活習慣病の予防につながるビタミンE、肝臓の働きを助けるタウリンなどが含まれ栄養豊富。5月末までの旬の時季にはスーパーなどにも並ぶので、たっぷり食べたいところである。

傷みが早いこともあり、基本的には水揚げしてすぐ浜で釜茹でして出荷される。

浜茹でされたものをそのまま酢味噌や生姜醤油で食べるほか、天ぷらやフライ、パスタの具材にとさまざまな料理で味わえる。

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烏丸御池からもすぐの和食イタリアン「To.」で出合ったのが写真の「ほたるいかの餃子」だ。中のほたるいかを見せられなくてごめんなさい。一口でパクっと食べてしまった...。

サクッとした皮とプリッとしたホタルイカの食感ギャップや野菜とからまるほたるいかのほの甘さ。添えられたふきのとう味噌をつけると、苦味も加わって、なんとも大人な味わい。ビールにもハイボールにも合う!

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To.」は、日本の風土で育まれた食材を用いるイタリアン「fudo」の2号店として20201月にオープンした。和食イタリアンと書いたが、どちらかというと和食寄り。和食にイタリアンのテイストを何かしら盛り込んだ料理がメインの、和の「イノベーティブ」店だ。

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fudo」のオーナーシェフ入江哲生さんが、2号店として「居酒屋のように気軽な店をつくりたい」と考えていたときに、京都のカフェで腕を奮っていた吉田伸介さんと知り合い、意気投合してこの店の話がまとまった。

ところが「今の店の引継ぎをちゃんとしたいから、1年待ってほしい」と吉田さんは言ったそうだ。1年は相当長いから、普通なら「ほかの料理人を探そう」となるところ、入江さんは、その誠実さに心打たれ、吉田さんを待つことにした。それから1年、ふたりが思う内装やメニューを実現させ「作りたかった店」が誕生した。

この話を聞いたとき、「なんと良い話だろう」と思った。

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 マンションの1階を店にしたのは、「まずは半径500Mに暮らす人を美味しいもので幸せにしたい」から。「ご近所さんがふらりと立ち寄って自分のダイニングのように使ってくださったらうれしい」と吉田さんは言う。

写真はスペシャリテ(お通し)、フィンガーフードの「八to 橋」。八ッ橋で鴨のテリーヌを挟んだもの。上にのっかっているのは、ウコンチップス。これを食べれば深酒も安心?ということ?

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ほかにも、イタリアのマルサラ酒で煮込んだ「豚の角煮」や器のなかでカプレーゼを再構築した「ストラッチャテッラのカプレーゼ」など、オリジナル料理ばかり。カプレーゼには、穂紫蘇がちらされ、なんとも風雅。ほかでは食べたことがない味に驚かされる。

「和食もいいけど、イタリアンもね」という日に訪ねたい新店だ。

■To.

京都市中京区御池高田町500 ポポラーレ御池1階
075-708-3720
17時~24時(23時LO)
休 木曜日+不定休

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。

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