BLOGうつわ知新2021.03.28

現代陶芸2

季節ではなく備前や織部、古染付といった焼物ごとにうつわをご紹介。京都・新門前にて古美術商を営む、梶古美術7代目当主の梶高明さんに解説いただきます。 さらに、京都の著名料理人にそれぞれの器に添う料理を誂えていただき、料理はもちろん器との相性やデザインなどについてお話しいただきます。

今回のテーマは「現代陶芸」です。
第1回では現代陶芸の魅力について、2回目には今回使用したものをふくめ、代表的な現代陶芸について解説いただきます。

そして、3回目は、京都を代表するイタリアン・イルギオットーネの笹島保弘シェフとのコラボレーションです。笹島シェフがうつわを選び、渾身の料理を盛りつけます。

知っているようで知らなかった「現代陶芸の世界」をお楽しみください。

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梶高明

梶古美術7代目当主。京都・新門前にて古美術商を営む。1998年から朝日カルチャーセンターでの骨董講座の講師を担当し、人気を博す。現在、社団法人茶道裏千家淡交会講師、特定非営利活動法人日本料理アカデミー正会員,京都料理芽生会賛助会員。平成24年から25年の二年間、あまから手帖巻頭で「ニッポンのうつわ手引き」執筆など。 全国の有名料理店と特別なうつわを使った茶会や食事会を数多く開催。

現代陶芸2

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 この器は丹波焼の市野雅彦氏の作品です。
丹波焼は本来、釉薬を掛けずに自然な灰被りに身を委ね焼き上げる、所謂「焼き締め」が基本です。しかし備前のように土の粒子が細かくない丹波焼は、時には水漏れが発生します。それを予防するために、この作品のように、赤ドベと呼ばれる鉄分を多く含んだ泥に灰などを混ぜた、化粧土と釉薬の中間的なものを表面に塗ったのです。
 しかしその赤い発色の面白さが人気になったため、水止めの用途というよりも、より装飾的な使われ方がされるようになったようです。この作品は赤黒い焼き上がりの作品も多い中、際立って鮮やかで艶のあるオレンジ色に焼き上がった秀作だと思います。取り立てて奇抜な意匠を施したわけではありませんが、たっぷりとした大きさと存在感ある厚みだけで他を圧倒する力を持っているようです。
 私はこの作品がこれ以上に見所を持っていたとしたら、料理より作品の主張が勝ってしまって、うつわとしての魅力を欠いたと思います。料理との調和を考えれば、作者の作為の止めどころが絶妙に良いのだと思います。仕事をやり過ぎないことも作者の力量だと評価しています。

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 これは藤平寧氏の作品です。家庭での一般的な使いやすさを考えれば、もっと小さなサイズのうつわが良いのかもしれません。しかし家庭で使われるうつわは、そのサイズの割に盛られている料理の量が多いと思います。料理も見せながらうつわの表情も見せるならば、料理のサイズはもっともっと小さくて良いと思います。
 藤平氏は京都市立芸大名誉教授の藤平伸氏の血を受け継ぎ、うつわのフォルムも色もとても繊細で、どこか甘い感性を持っています。陶器では表現の難しい色や形への挑戦は、時には自己陶酔的と思えるほどで、いつも驚かされます。個性あふれる作品でありながら、その主張が他に強要するような圧もなく、料理との相性も難しくないのだと思います。

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 12時方向のビビットな赤いうつわは山田晶の作品です。彼の父は走泥社の中心人物の山田光なので、作風にはどこかその力を受け継いでいます。金属やプラスティックで成形されたような無機質感が漂ううつわです。料理を盛り付ける役目を持たさなくても、置かれた空間に磁場を作る花のような存在感を持ったうつわです。形にも色にも料理に媚びない存在感があります。
 このように一見、料理と相容れないように思われるうつわですが、実際に盛り付けてみると面白い化学反応が生まれます。明らかに洋食器的な見かけとは裏腹に和食器として用いる方が面白いと思う人が多いのか、和食の料理人からの支持も多くあります。

 次に左下の細長い銀色の作品は先ほどご紹介した藤平寧氏の手によるものです。レンガが長くなったような形に銀で装飾を施し、陶磁器でありながら、一見無機質で冷たい表情を見せています。しかし陶磁器で直線的な造形物を作ろうとしても焼成時に形がゆるんで、緩やかな曲線になってしまいます。その変形が我々にやわらかなイメージを抱かせ、作品の見所となっていきます。誰もが「エッ!うつわ?」と尋ねたくなるのですが、使ってみるとなかなか愉快な表情を見せてくれます。

 最後に右方向に見えるライムグリーンの佐々木彩子氏の作品です。彼女は先に紹介した藤平寧氏の奥様です。ご夫婦なので互いに影響し合っているのか、共通する香りもするのですが、ご主人のスイートさとは異なりシャープなイメージ作品も見受けられます。この作品は陶磁器にはなかった挑戦的な色使いです。このうつわに和食を盛るなら、和食はどのような変化が必要なのでしょうか。想像するだけでも楽しみですね。

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 市野雅彦氏は先にご紹介したうつわ以外にも、今回の取材に合わせてうつわを提供してくださいました。料理を乗せてみて、これらのうつわが美しいかどうかを見極めるためには、陶芸家も様々な料理を食べて学ぶ必要がありますし、料理人も、実際に盛り付けてその感想や好みを陶芸家にどんどん伝えていく必要があります。
 日本の現代陶芸は、想像を絶する可能性を持っていると思います。どうぞ皆さんもこだわりを持ってうつわを買い求め、現代陶芸の大きな飛躍に、貢献してくださることをお願い致します。

 2年前、私のお客様から「自分も人生の晩年を迎えつつあるので、その日々を楽しむご飯茶碗を作って欲しい。人生最後になっても良いご飯茶碗を。。。。」と依頼されました。そしてその茶碗を市野雅彦氏に依頼しました。彼は期待に応えて、実に素晴らしい茶碗を届けてくれました。私も、お客様に大きな顔をして納品させていただいたことを覚えています。
 でもいま思い返すと、作品としては素晴らしいものだったけれど、日常のご飯茶碗としては過ぎたものだったと反省することもあるのです。
 この上質でありながら、さりげない作品に仕上げるということは、市野雅彦氏の腕をもってしても簡単ではなかったのですが、そのあたりは私自身も今後勉強していかなければならないと思っています。上質な作品でありながら、料理よりも作品が目立ってしまわないこと。料理と共存できる「うつわ」としてのわきまえを持つこと。作品の個性が前面に主張され過ぎず、「うつわ」という道具の背後に作品の個性が隠れていること。このようなことを頭の中に置いて現代陶芸と料理の融合を目指したいと思っています。さらにその先のモダンアートな食卓を実現させてみたいものです。

現代陶芸3につづく

食知新

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